多肉植物

多肉植物の葉や根につく白い虫。カイガラムシの駆除と予防のポイント

コナカイガラムシ

多肉植物やサボテンに発生する米粒状の白い虫。カイガラムシ(コナカイガラムシ、ネコナカイガラムシ)の駆除と予防について解説します。


カイガラムシ

カイガラムシ(Coccoidea)は、カメムシ目(Hemiptera)ヨコバイ亜目(Homoptera)カイガラムシ上科(Cocoidea)に分類される昆虫の総称です。

世界で7300種類が存在すると言われ、一般的には28科に分類されますが、

カイガラムシの分類学的研究は大変遅れているため科の概念すら研究者間でコンセンサスが得られていないものも多い。(Wikipedia「カイガラムシ」)

以上のことから、正確な学名や和名の特定は難しいのですが、一般的に多肉植物の葉や茎に発生する米粒状の白い虫は、多肉植物を栽培している人のあいだでは「コナカイガラムシ」と呼ばれることが多いです。

一方で、根に発生する白い虫は「ネジラミ」と呼ばれることが多いです。

 

サボテンコナカイガラムシとサボテンネコナカイガラムシ

日本に分布するカイガラムシについては、愛媛大学農学部の田中宏卓博士が専門で研究されており、下記のデータベースを作成されています。

日本産カイガラムシ下目昆虫リスト

上記データベースで調べてみますと「サボテンコナカイガラムシ」と「サボテンネコナカイガラムシ」という2種類のカイガラムシがいることがわかります。

しかも、ここが結構重要だと思うのですが、サボテンコナカイガラムシはコナカイガラムシ科(Pseudococcidae)なのに、サボテンネコナカイガラムシはネコナカイガラムシ科(Rhizoecidae)に分類されています。

見た目は似ていても好む場所が違うのはこのせいでしょうか。

というわけで、100%断言はできませんが、葉や茎を食害する米粒状の白い虫を「サボテンコナカイガラムシ」、根を食害する米粒状の白い虫を「サボテンネコナカイガラムシ」と呼ぶことにします。

おそらく後者が、いわゆるネジラミだと思います。というかネジラミという名前はちょっと気持ち悪いので、「サボテンコナ」と区別し、「サボテンネコ」という名前を提唱したいです(え?)。

多肉植物

多肉植物の場合は、この2種がよく見られるカイガラムシです。

じつはこの記事を書くきっかけは、しつこいネジラミにお困りだという読者の方からお問い合わせがあったからなのです。ありがとうございます。

さっそく「ネジラミいないかな〜」といくつか調子の悪い多肉を引っこ抜いてみたのですが、いませんでした(がっかり)。

うちでは間違いなくネジラミだと言えるものが発生したことがないんですね。これそうかな〜、というフワフワしたものがサボテンに発生したことがありますが、それ1回だけでした。

読者の方のお話では、根や根元に米粒状の虫が発生し、土の中にコロニーを形成しているそうです。

わたしはいままでは、同じ種類のカイガラムシが心地の良い場所を選んで、それぞれ葉っぱと根に別々に生息しているのかと思っていたのですが、見た目は似ていても別種なのかもしれませんね。

 

サボテンコナカイガラムシの駆除

うちでときどき発生する米粒状のカイガラムシちゃんをご紹介します。茎や葉の根元につき吸汁します。

多肉植物についたカイガラムシ

葉の中心にいます。慣れるとかわいく見えないこともない(笑)。

たしかこれはデビーだったと思いますが、この虫は紫色が好きなんじゃないかと思います。パープルヘイズにもよく発生します。

あ、姫秋麗も紫ではないですが発生しますね。関係ないかもですね。

 

楊枝やピンセットでつつく

見える範囲のカイガラムシは楊枝やピンセットで取るのが一番手っ取り早いです。尖ったピンセットだと葉を傷つけやすいので、楊枝のほうがいいかもしれないです。

その後、葉の付け根の見えない部分にいるカイガラムシや、残った卵からの再発生を防ぐために、オルトランDX粒剤をまいておきましょう。

卵や孵化したての幼虫は見えないので、見える範囲の駆除だけだと再発しやすいです。

通常はこれで十分ですが、ほかにいろいろな方法を試してみましたので、実験結果をご覧ください。

 

界面活性剤

できるだけ薬を使いたくなかったので、今年の春(3月下旬)にカイガラムシが発生したときに、非イオン界面活性剤を試してみました。花王のエマールです。

エマール水溶液

エマールの水溶液を観葉植物のハダニやスリップスの退治に使っています。このあいだもカラテアオルビフォリアの土に小さな虫が発生していたので、エマールを混ぜた水に土をつけたら退治できました。

カイガラムシを界面活性剤で退治

そこでカイガラムシにエマール水溶液をかけてみました。葉の間にいるのでもう少したっぷりかけよう。

カイガラムシ

しかし、この実験に大きな欠陥があることにやってみてから気づきました。生きているのか死んでいるのかわからない。死骸が取り除けない。

というわけで、いつものように楊枝できれいにしてフィニッシュ。取り除きやすかったので死んでる感じはしましたけど、どうなんでしょうか。

デビー

そして数日後、きれいにはなりました。でもやはり茎がダメージを受けており、このあとも調子が悪かったです。しばらくしてから下のほうにまだいる感じがしたので、オルトランDX粒剤をまきました。

夏を越して9月下旬。プランターから抜いてみました。

カイガラムシの食害その後

カイガラムシのダメージを受けたせいなのか、茎の根元や地際が黒くなっています。

前に日焼けとカビの記事で書きましたが、多肉植物が黒くなる現象には、カイガラムシが関与しているケースがあるように思えます。

白い点々はカイガラムシかなと思って拡大してよく見たのですが、小粒タイプのマグァンプKかオルトランDX粒剤の溶け残ったものだと思います。

多肉植物

ネジラミがいることを期待したのですが、根のほうは虫はいませんし、悪い状態には見えませんでした。

白い点々が幼虫なのかを確認するため、そのまま室内において観察しました。

多肉植物

茎の根元の食害を受けたと思しきところから葉っぱが1枚また1枚と取れていきます。

糖分の多い排泄物が残ってカビが発生し、茎の内部に入っているのかもしれません。白い点々も虫じゃないようです。

カイガラムシが関与する病気は「すす病」といいます。ただ、すす病はもっとベタっと黒くなる印象があります。一気に症状が進むようすもないので、単純に吸汁された細胞がダメージを受けただけかもしれません。

 

溺れさせてみた

次に、観葉植物の鉢に葉っぱを放り込んでいた姫秋麗が日照不足でひょろひょろに育ち、カイガラムシが大量に発生していたのを発見しました。

しめしめ、また実験できる(ニヤリ)。

カイガラムシ

多肉のジャングルムジムで遊ぶコナカイガラムシたち。

カイガラムシ

土から抜いて振るだけでもだいぶ落ちました。ただ全部は取れません。

メールをくださった読者の方は、水と少量の台所用洗剤に漬ける方法でネジラミの駆除を試みていらっしゃるそうです。

わたしも土から抜いて水につけてみました。

コナカイガラムシ

カイガラムシは、表面がロウのようなもので覆われているので水を弾きます。これが殺虫剤が効きにくい原因です。

コナカイガラムシ

プカプカ浮いて泳いでいます。水遊びじゃないぞ!

カイガラムシ

必死で葉っぱにしがみつこうとするカイガラムシ。ジャックとローズのようなドラマが展開されているのかもしれません。

底のほうに沈んでいるカイガラムシをよく見るとまだ動いています。普段はあまり動きませんが、危険な状態なせいか意外に動きが早いです。水中で呼吸できるわけではないと思いますが、すぐには死なないようです。

そこでエマールを少々投入。

動きが止まったかもしれません。すまないことをした・・・。ただ死んでるかどうかよくわからないんですよね。

界面活性剤が昆虫に効くのは、昆虫の気門を封鎖し窒息死させるためだと言われます。台所の洗剤も界面活性剤です。非イオン系のほうが植物には優しいそうですが、どちらでも大丈夫かもしれません。手持ちの洗剤で試してみてください。

ただこれだけだと再発までは防げないと思うので、清潔な土に植え替えて、隔離のうえで様子を見ましょう。

 

オルトランDX粒剤

先ほども書きましたが、最後の仕上げとして、再発を防ぐには薬を使用するのが確実です。卵が残っていれば、また発生してしまうからです。

オルトランDXは浸透移行性があり薬効が持続します。葉や茎を食べることによって虫が死ぬので、持続性があります。

カイガラムシは幼虫の時期のほうが薬が効きやすいそうです。ですから発生初期に効かせると、成虫になる個体が減り、産卵を減らすことができます。

有機リン系殺虫剤なので無意味に多用するのは、健康的にも環境的にもあまりおすすめしません。ミツバチなど他の昆虫に影響が出ます。使用は最小限にとどめ、効かせたいときにタイミングよく使いましょう。

200gのボトルタイプで十分です。使いやすい。

1kgの袋タイプ。お庭に広範囲にまくならばこちらがいいでしょう。ただはっきり言ってそんなに大量に必要ありません。なんでもかんでも使用するのはおすすめしません。

水溶液にしてスプレーボトルに入れて室内で観葉植物に使っているとか、多肉の水やりに溶かして使っているなんてレビューがありますが、そんなこと怖くてできん・・・。粒剤をプランターにまくときですら息止めてるのに・・・(超ビビり)。

そのような使い方はメーカーでは想定していません。注意書きをよく読んで使用しましょう。

地植えの多肉植物

そもそもすべての多肉植物がカイガラムシの被害を受けるわけではなく、何年もまったく発生しないもののほうが圧倒的に多いです。

カイガラムシにも多肉の好みがあるせいだと思いますが、好まれやすい品種だけを重点的にチェックするだけでも予防になります。できるだけ薬を使わない対処法をしたうえで、必要なときだけ薬を使用しましょう。

 

予防には早めの対応と環境整備

オルトランDXを使っていても広範囲に繰り返し発生するなら、栽培環境に問題がある可能性があります。ですから栽培環境に害虫が発生しないように予防することも重要です。

季節的に4、5、6月は発生しやすいので、この時期にしっかりオルトランDX粒剤で対応しておけば、爆発的に増えることはないと思います。気温が上がってくる頃にまくといいでしょう。

デビーについているのを発見したのは3月下旬です。オルトランDX粒剤は約1ヶ月効果が持続します。幼虫の時期のほうが効きやすく、産卵する個体を減らせます。お住いの地域によりますが、3月頃から発生が予想される多肉植物にだけ予防的にまくといいでしょう。

オルトランDX粒剤について詳しくは住友化学園芸のページをご覧ください。

 

栽培環境の温度に注意

これはフジコナカイガラムシとクワコナカイガラムシのデータ(「フジコナカイガラムシおよびクワコナカイガラムシの発育と増殖能力に及ぼす温度の影響」)ですが、最も産卵数が多いのが24度。30度を超えると成虫まで羽化する個体が減り、高温障害が認められたそうです。

ソラマメ催芽種子を餌として長日条件下(16L:8D)でフジコナカイガラムシとクワコナカイガラムシの個体飼育を行い、発育および増殖能力に及ぼす温度の影響を調べた。両種とも温度が高くなると発育期間が短くなったが、フジコナカイガラムシでは30℃、クワコナカイガラムシでは32℃で成虫まで羽化する個体が少なくなり、高温障害が認められた。ふ化から羽化までの発育零点および有効積算温度はフジコナカイガラムシで12.2℃と331日度、クワコナカイガラムシで10.7℃と346日度であった。両種とも産卵数は24℃で最も多くなり、フジコナカイガラムシで526個、クワコナカイガラムシ498個であった。また、両種とも産卵期間の前半にほとんどの卵を産下した。内的自然増加率はフジコナカイガラムシでは24℃で最も高く0.117、クワコナカイガラムシでは28℃で最も高く0.151となった。

ですから、室内や温室で24度前後の温度をキープしていると、一年中繁殖しやすい環境になってしまいます。

一方、発育零点(発育の停止する温度)はフジコナで12.2度、クワコナで10.7度です。これを下回ると生育しなくなります。

多肉植物を好むコナカイガラムシも同じかどうかわかりませんが、同じコナカイガラムシなので参考にはなるでしょう。

したがって、できるだけ夏も外も屋外に置いたほうが予防になるものと思われます。

もちろん極端な高温・低温は、日焼けや凍傷など別の障害が出るので、高ければ良い、低ければ良い、というものでもないですが、一年中春のように心地よい環境だと、生き残ったものが産卵を繰り返すことになってしまう可能性があります。

 

害虫を持ち込まない

栽培環境に卵を持ち込まないことも重要です。とくネジラミは土の中にいるので、購入した多肉植物はできるだけ早めに根をチェックし、新しい土で植え替えましょう。

また、多肉植物はいろいろな土で植えられて販売されているので、ご自身の栽培条件にあった土である程度統一したほうが、鉢内の状態を想像しやすくなります。

どんな土なのかわからないと、水やりの適した頻度もつかみにくくなります。

ちなみにわたしは、下の多肉の土と、赤玉土と、観葉植物用の余った土をブレンドしています。

デビーのプランターは引越し後で土がなかったので赤玉土だけです。赤玉土だけだと肥料分がないので肥料を足していますが育ちがイマイチですね。

観葉植物用の土には有機物が多いので育ちがよくなります。ただ有機物が多いということは腐食するということでもあるので、風通しの悪いところで多湿にすると雑菌が繁殖しやすくなるんじゃないでしょうか。

 

ネジラミは乾燥がお好き?

これは読者の方からの情報ですが、ネジラミは乾燥している土に発生しやすいそうです。欧州にお住まいなので、日本よりも乾燥しやすいみたいですね。

サボテンに発生しやすいのも、水やり頻度が多肉より少ないからでしょう。

 


おわりに

以上、謎の多いあの白い虫ですが、わかる範囲でいろいろまとめてみました。調べるときにキモい画像をたくさん見たので、やや免疫がついた気がします。

カイガラムシちゃんたちの供養になったでしょうか。多肉を食べなければいいんですけどねえ。

子どもの頃に「日本昔ばなし」で見た蜘蛛の糸の話が記憶に残っていて、あまり虫は殺したくないのですが、実際のところ、家庭菜園や園芸をやっていると、食べることにしろ、趣味にしろ、自然を利用することは殺生と隣り合わせだな、と思います。

多肉植物

仏教は殺生を禁じますが、人間は植物にしろ動物にしろ、他の生命を殺して食べなければ生きていけません。殺してはいけないというよりも「命を奪わなければ生きていけないことに無自覚ではいけない」ということだと思います。人間もカイガラムシも地球の一部なのです。

カイガラムシを殺すなんて! How dare you(よくもそんなことを)!

冗談です(笑)。

批判するだけなら簡単なんですけどねえ。グレタちゃんについてはいろいろ思うところがありますが、それはまた別の機会に。

ではまた。

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