秋ですね。多肉植物は夏を無事に越せましたか。わたしのところは黒くなったのが数名。黒くなったと言っても原因はさまざまです。今日は多肉が黒くなる原因である「日焼け」と「カビ」について解説します。
目次
「なんで多肉すぐ黒くなってしまうん?」
エケベリアなどの多肉植物を育てているとたいてい遭遇するトラブル。それは日焼けとカビです。
とくに後者は、場合によっては一気に悪化し、致命的になります。わたしも多肉植物を育て始めた頃は、な、な、な、なんだこれは〜? と恐怖におののきました(おおげさ)。
いまは?
もう慣れました(笑)。
最初は何が原因なのかわからなくてびっくりすると思うので、日焼けとカビの状態の違いや対処法を解説します。
多肉植物の日焼け
まず原因がわかりやすい日焼けのほうからです。強い日光に当たって焦げた状態です。こちらは気をつけていれば防ぎやすいです。
葉っぱの下側が焦げています。上からの日光ではなく西日にやられたようです。茎も黒くなっていますが、カビと違う点は、その他の部分は元気で、被害が広がっていかないことです。
根も白い根が生きているので、被害が葉っぱだけならば、何もしなくても回復します。上の写真の場合は、茎もダメージを受けているので切って仕立て直しました。
切り口が見えるかと思いますが、中心が緑色です。雑菌が侵入して腐っている場合は、中心が黒いことが多いです。
多肉植物の日焼けが発生しやすい3つのパターン
次の3パターンに該当する多肉は要注意です。
- 長期間室内に入れていて日光に慣れていない
- カットしたばかりで根が育っていない
- 春や台風後など急激に日光が強くなるとき
人間と同じですね。日焼けするからといって過保護にしていると徒長しますし、さらに日焼けに弱くなります。
また多肉といってもさまざまで、日差しへの耐性はかなり違いがあります。各品種の性質を理解することが大切です。
照度計で明るさを測ってみよう
照度計で測ってみるとよくわかるのですが、春から秋の晴れの日の直射日光下は10万ルクス以上あります。
4月下旬のベランダで測ったときの写真です。10万300ルクスもあります。だいたいゴールデンウィーク頃から日差しがきつくなってきますから、注意が必要ですね。お肌もね。
同時刻の同じベランダでも、すりガラスで少し日差しが遮られる場所に入ると、3万6600ルクスです。直射かどうかで大きな差があります。物干し竿がつくる日陰でさえかなり違います。
一方、まっ黒い影の中は、明るい窓辺と同じくらいの5000前後です。屋外でもかなり暗いです。
どのくらいの数値が適しているのか限界なのかは、植物・品種によるのでなんとも言えません。
また日照だけでなく温度も関係してきますし、東か西かによっても違うと思います。西日が当たると上のエケベリアのように横から日焼けしやすくなります。東側ベランダのほうが植物を育てやすいです。
照度計はそんなに高くもないので植物を育てるならあるといいかもしれません。ないとダメというものでもないけど1回測るとわかりやすいです。
多肉植物に必要な照度の目安
これは種類・品種によって違います。置き場の照度を把握して多肉植物の育ち具合を観察し、適した置き場所を見つけましょう。焼けやすいものは暗めの場所に、強い日光を好むものは明るめの場所に。
また日光が当たりすぎると植物の成長は抑制されます。日光が足りないと徒長し、緑色が強くなります。
10万ルクス以上の直射日光を好むものというと、かなり限られてくると思います。砂漠のサボテンとか?
普通の多肉植物では5万もあれば十分ではないかと思います。
こちらの掲示板(英語)に書き込んでいるアリゾナでサボテンを育てている人は、50%遮光しているそうです。照度10万から12万くらいでしょうから、その半分ということは5、6万ルクスですね。
カット・植え付け直後は要注意
数年前の5月、わたしは少し根の出たエケベリアをひとつずつきれいにポットに植え付け、イギリスへと旅立ちました。
イギリスのガーデン巡りやサボテンショップ訪問を楽しみ、帰宅したわたしを待っていたのは、無残にも丸焦げになったエケベリア。
ひとつ残らず真っ黒にカリカリになっていました。写真がないのでお見せできないのが残念ですが、たとえて言うなら・・・。
ポットに植えられたキクラゲ。
根が少ないのにわざわざ水をやっていったのもよくなかったのかもしれません。蒸し焼きになった感じでしょうか。あるいは日焼けだけでなくカビか何かの合わせ技でしょうか。まだ植えないで、風通しの良い日陰に置いていったほうがよかったと思います。
台風が過ぎ去った後の直射日光
説明の必要もないくらいヤバイです。気をつけてください。
多肉が苦手な雨が続き、高温多湿でムンムン。場合によってはずぶ濡れになり、そこへ雲一つない青空。ガンガンの日光。暴風雨からの無風。気温は38度。
多肉はもう限界です。
限界手前で踏ん張る地植えの花うらら。
対処法としては、台風が来る前に避難させるのがベストです。
閉めっきりの室内はすぐにカビが発生しますから、室内よりは風の通る軒下などがいいです。どうしても室内に入れたい場合は、空気の動きのある涼しい場所に。室内避難中は鉢内を乾かしたままにして、できるだけ早めに外に出しましょう。
多肉植物に発生するカビ
多肉が「カビて黒くなる」ケースは、もう少し複雑です。こちらについてはわたしもまだよくわかっていません。顕微鏡で確認したわけではありませんし、微妙に異なるパターンを目にするからです。
今年は梅雨が長かったので、ベランダで育てていたデレッセーナが黒くなっていました。発見が遅かったので、ちょっと救えない感じです。
初期症状としては、葉から発生した場合には、1枚だけ変な色になっていたり、カラカラに萎びていたりします。下の葉が枯れるのは自然なことですが、上の葉が枯れてくるのは問題です。茎まで冒されていなければ、葉をとれば止まる場合があります。
場合によっては非常に早く症状が進行します。
抜いてみるとこんな感じです。根も枯れているように見えます。このプランターは黒いので、日に当たるとけっこう暖かくなってしまいます。プランターのふちに近いので通気も悪かったのかもしれません。風通しの悪いほうから黒くなっています。
黒くなるのは、いわゆる根腐れであることもありますが、このプランターの土はカラカラで、水はあまりやっていませんでした。ですから土の水分過多が原因ではありません。
これは数年前に雨がかかる東向きの場所で育てていたときのデレッセーナです。多湿なので苔が生えていますが、ごきげんそうです。土の水分はそこまで嫌いなわけではありません。
問題は空気中の湿度や温度だと思います。プランターの温度も関係していると思います。
茎の上半分が黒くなっています。黒カビっぽく見えます。なんらかの菌が繁殖しているようです。こうなってしまうともうダメです。
茎の下のほうは黒くないので、黒くないところまで切って土に植えてみましたが、根もほとんど枯れているのでこのまま干からびました。
葉っぱはポロポロととれてしまいます。付け根が黒くなっているものは、だいたいこのまま干からびてしまうので、葉挿しで救うことも困難です。
以下、原因について考察してみます。
湿度の高さ
最大の原因は、空中湿度の高さです。カビそのものは低温多湿も好みますが、冬は乾燥しているので夏のほうが被害が多いです。住んでいる地域の差も大きいです。
わたしの持っている範囲では、葉が薄くて透明感のあるエケベリアに被害が出やすいと思います。
あと買ってきたばかりのものも要注意です。売り場ですでに弱っている可能性があります。できるかぎり健康に育てて、ベストコンディションで夏を迎えられるようにしましょう。
ただ地植え実験の結果を見ると、単純に湿度が高いとダメというものでもない気がします。品種の差が大きいです。湿度が高いですが、案外と土がひんやりしているので消耗していないようにも見えます。
すす病
デレッセーナの近くに紫色のデビーがあり、小さいカイガラムシが少し発生していました。どういうわけだかカイガラムシは紫色の多肉が好きです。取り除いてオルトランをまいたのですが、その後にデレッセーナがこの状態になりました。
カイガラムシやダニは口吻で植物の汁を吸います。傷口ができるので雑菌が侵入しやすくなります。またカイガラムシの排泄物は糖分が多く、黒カビの栄養になります。
このカイガラムシによるカビ(糸状菌)の繁殖を「すす病」といいます。これはいくつかの糸状菌が引き起こす病状の総称です。
うちだと大きいタイプのカイガラムシが夏みかんに発生しやすいです。放置すると夏みかんがすす病で真っ黒になってしまいます。
今回のデレッセーナは、カイガラムシの被害を受けて、そこから雑菌が入ったのかもしれません。ですからカイガラムシが発生したらできるだけ早くオルトランDXをまくなどして対処しましょう。
オルトランよ、きみはなぜそんなに臭いのか。
たぶん誤飲を防ぐためだと思います。下駄箱の上の戸棚に入れているのですが、このままだと臭いです。このまま密閉容器に入れて保管しています。多少は臭いが防げます。
灰色かび病
カビ(糸状菌)は空気中にも土壌中にも無数に存在し、植物体に侵入し病変を生じさせます。「すす病」のほかに「灰色かび病」も多肉に感染します。
灰色かび病は、Botrytis cinerea(ボトリティス・シネレア)という糸状菌が原因です。白いバラの花に赤い斑点をつくるやつですね。バラの花には長雨のときに発生することが多いです。気温が高くなくても発生するので要注意です。
わたしはあまり薬は好きではないのでオルトランとベニカXファインスプレーくらいしか使いませんが、カビにはダコニールがいいそうです。
ダコニールはカビ、ダニ太郎はダニね。ダニコールじゃないよ。
おわりに
以上、日焼けとカビについてまとめてみました。
多肉植物は丈夫で栽培しやすいものの、日本とは気候が異なる場所からやってきたものも多いため、トラブルが皆無というわけではありません。
- 根が張っていない
- 日光が強すぎる
- 湿度が高い
- 鉢が日に当たって暖かい
- 土が温まって根が煮えている
- 風通しが悪い
- ダニやカイガラムシなどの害虫
- その他の謎な原因
これらのいずれかまたは合わせ技でトラブルが発生します。
多肉植物を長く付き合うには、トラブルが起きてもあまりショックを受けないことも大切です。最初はショックかもしれませんがだんだん慣れます(笑)。元気なうちに葉挿しなどでバックアップを作っておくといいですね。
ではまた。
(追記)動画もよかったらご覧ください
多肉植物が黒くなる3つの理由 | カビて枯れそうなエケベリアを葉挿しで救う | 発芽・発根する葉の判別は可能なのか?