「ヒマラヤの青いケシ」として知られるメコノプシス属。透き通った青の花弁と黄色の雄しべが美しい希少なケシです。暑さが苦手なため日本では栽培が困難ですが、近年は植物園などで見ることができます。
目次
ヒマラヤの青いケシ
メコノプシス(Meconopsis)属は、西ヨーロッパ、中央アジア、ヒマラヤの高山地帯、ミャンマー、中国に分布するケシの仲間です。
とくに青い美しい花弁を持つベトニキフォリア(Betonicifolia )とグランディス(Grandis )の2種が有名です。
通常、「ヒマラヤの青いケシ」というとベトニキフォリアのほうを指すそうですが、ベトニキフォリアの自生地は中国雲南省の高山地帯です。ヒマラヤの高山地帯で多く見られるのはグランディスのほうで、グランディスのほうが大きい花が咲きます。
涼しい高山地帯で咲くケシなので日本では栽培が難しいのですが、1990年の「国際花と緑の博覧会(大阪)」で展示されたことによって日本でも広く知られるようになりました。
チェルシーフラワーショーの青いケシ
わたしは、おそらく上記の博覧会の頃だと思いますが、何かで知ってずっと見てみたいと思っていたものの、2013年まで機会がなく、イギリスのチェルシーフラワーショーを訪れたときに初めて見ることができました。
パビリオン内に展示されていた青いケシ。
イギリスでは日本ほど栽培が難しいわけではないのかもしれませんが、とはいえ一般的に見る植物ではありません。
こちらはイギリスで宿泊させてもらったサボテン園のお庭です。奥のほうにメコノプシスが1株だけあります。前述のようにイギリスでは園芸店でもタネを売っているのですが、個人の庭で咲いているのを見つけたのはこのときだけです。
ボドナントガーデンの青いケシ
ウェールズ北部のボドナントガーデンにはメコノプシスがたくさん咲いているエリアがありました。栽培が難しいので、イギリスのガーデンでもそれほど多く見かける花ではありません。
下を向いて咲くので写真を撮るのが難しいです。よく見ると全体に細かい毛が生えています。
この日は暑かったのですが、がんばって咲いていました。メコノプシス的にはしんどい暑さかなと思いました。
ギボウシやシダなどシェードガーデンに適した植物と一緒にボーダー花壇に植えられていました。この青は、なかなかない青ですよね。雄しべの黄色もすばらしい組み合わせ。芸術的です。
動画を撮ってあるのでお見せしたいのですが、動画編集ってまだよくわからなくて・・・。時間もないし。
ボドナントガーデンについては前に紹介しているので、よかったら下記の記事もご覧ください。
キングサリのトンネルが美しい。北ウェールズのボドナントガーデンを訪問、の巻
黄色いメコノプシス
メコノプシス属にはカンブリカ( Cambrica)という黄色い品種もあります。
ボドナントガーデンには青いケシの近くに、このかわいらしい黄色いケシも咲いていました。
札がないので確信がないのですが、メコノプシス・カンブリカだと思います。うう、変換しようとすると「寒ブリ課」になる。イライラ・・・。
このカンブリカは唯一のヨーロッパ産メコノプシスです。カンブリカは「ウェールズの」という意味のラテン語だそうで、「ウェルシュ・ポピー(ウェールズのケシ)」とも言います。だからボドナントガーデンに植えてあったのかな。
ただしこの品種は遺伝子解析の結果、メコノプシス属ではなくケシ属に含めるべきという結果が出ているそうです。
青いのと比べたら普通なのですが、この黄色いのもきれいです。
日本で青いケシを見られる場所
前述の「花と緑の博覧会」以降、日本でも植物園や冷涼な地方で青いケシが栽培・展示されています。
日本で見られる場所をリストアップします。
一年中青いケシが見られる「咲くやこの花館」(大阪)
大阪・鶴見緑地公園にある咲くやこの花館では、高山植物室内で開花調整を行っており、青いケシをほぼ一年中見ることができるそうです。
青いケシの群生が見られる「大鹿村・中村農園」(長野)
長野県下伊那郡大鹿村の大池高原にある中村農園では、5000株の青いケシの群生を見ることができます。
個人の方が最初に200株を植えて、20年以上かけてここまで増えたそうです。すごいですね。自生地以外で大規模群生で咲いている場所は世界的にもそんなにないのでは?
その他のスポット
ほかに以下の場所でも青いケシを見ることができます。
涼しい地方の植物園が中心になりますが、けっこうたくさんあるんですね。国内の植物園はまだ行ったことのないところがたくさんあります。家にいると出不精・・・。
愛媛県の上林森林公園ではひんやりした風穴を利用して栽培しているそうですが、今年は盗掘の跡があったそうです。持ち帰っても愛媛では栽培困難なことを知らないんでしょうか。みんなに見てもらうために苦労して育てているものをどうして盗めるんですかね。理解できないですね。
メコノプシスのタネ
冷涼な地域ならば栽培が可能なので、日本でも育てられないことはありません。うちのほうはまず無理ですが、涼しい地域にお住まいの方、または冷房室をつくってでも育てたいというもの好きな方は、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。まちがいなくご近所の話題になるでしょう。
「あのうち、変なケシ育ててる・・・(ヒソヒソ)」
日本ではケシの一部(ソムニフェルム種)は「あへん法」により栽培が禁止されていますが、メコノプシスには麻薬成分が含まれていないため同法の禁止の対象にはなっていません。ですので安心して育てましょう。
楽天市場でもタネを売っています。上のリンクはメコノプシス・ベトニキフォリア。同じ店でメコノプシス・グランディスのタネも売っています。
【輸入種子】Thompson&Morgan Meconopsis Grandisメコノプシス・グランディス トンプソン&モーガン
グランディスのほうが花が大きいです。どうせ育てるなら両方育ててみては?
花と緑の博覧会にメコノプシスを出品された方が書いた本です。メコプシス栽培にチャレンジするなら必読ですね。
ちなみにAmazonマーケットプレイスで植物のタネを買うのは一部の信頼できる出品者を除いておすすめしません。写真を加工して偽物のタネを売っている業者がいるので注意しましょう。
おわりに
花そのものもたいへん美しいですが、「ヒマラヤの青いケシ」という別名が、これまた神秘的なイメージでいいですよね。英語だと「ヒマラヤンブルーポピー」ですが、日本語のほうがかっこいい。
ヒマラヤの高山地帯で薄霧に包まれ朝日を浴びてひっそりと咲く青いケシ・・・。うう、見てみたい。
まあ無理なんで、咲くやこの花館と中村農園に行きたいなと思います。
ではまた。