ガーデニング

【進撃のナガミヒナゲシ】侵略的外来植物について考える

tabiniwa ナガミヒナゲシのイラスト

最近よく見かけるナガミヒナゲシ。自治体のなかには駆除を呼びかけているところもありますが、いったい何が問題なのでしょうか? ナガミヒナゲシから「侵略的外来植物」について考えます。

ナガミヒナゲシが咲いている

じつはこの記事は、半年ほど前に書いたのですが、時期的にナガミヒナゲシの写真も自分で撮ったのがないし、なんか大袈裟に駆除を呼びかけているように受け取られるのもなあと思って、保存したままでした。

で、先日、散歩の途中に、毎年ナガミヒナゲシが咲いている細い通路に、写真を撮りに行ったんです。わざわさ。

が、しかし。今年は春が早かった。

ナガミヒナゲシ

しょぼい花がさらにしょぼい(笑)。ここはもうほとんど咲き終わってしまっていて、1つしか咲いていませんでした。

まだタネが熟していないから、駆除する場合はこれくらいのときに抜くといいですね。タネが飛んでしまうと、翌年あちこちから生えてくる可能性があります。

うちの庭にも以前、砂利だらけの荒地の部分に生えてきて、毎年気づくと抜いていたのですが、生えなくなるまで何年もかかりました。今ももしかしたら生えてるかも。

ナガミヒナゲシ

これは飲食店の花壇に生えていたナガミヒナゲシと思われるケシの花。ここもたくさん生えていましたが、花はほぼ終わっていました。

 

ナガミヒナゲゲシの特徴

ナガミヒナゲシは、非常に繁殖力が強い植物です。自分でタネをまかなくても、タネがどこかから飛んできて、いつの間にか咲いています。ここが、園芸植物として流通するケシ類と大きく違います。

1960年代に国内で初めて確認されて以来、日本各地に拡がり、今ではあちこちで雑草化しています。

春から初夏にかけてオレンジ色の小さな花を咲かせ、たくさんの小さいタネを周囲にまき散らし、タネが飛ぶ前に抜かないとどんどん増えていきます。

またナガミヒナゲシは「アレロパシー」という他の植物の生育を抑制する作用を持つ物質を放出します。

まとめると、

  • タネがめちゃくちゃ多い(1個体で15万粒!)。未熟なタネでも発芽する。タネが小さいのでどこからか飛んでくる。
  • 他の植物の生育を阻害するアレロパシー作用を持つことが確認されている。

上記の2つの要因により、近くにナガミヒナゲシが咲いていると、庭や畑や空き地がいつのまにかナガミヒナゲシだらけになってしまう可能性があります。

ナガミヒナゲシ

ナガミヒナゲシは「生態系被害防止外来種(要注意外来生物)」には指定されていませんが、将来的に生態系や農業に影響を与える可能性があるために、駆除をすすめる自治体が増えています。

駆除は簡単で、花が咲く前や種ができる前に抜いてしまうのが一番です。葉っぱに特徴があるのでわかりやすいです。

外来種だから駆除が必要なわけではありません。外来種がダメだったら園芸はできません。生態系に被害を与える可能性があるから要注意なのです。

 

「侵略的」外来植物とは

ナガミヒナゲシのように繁殖力が強い植物のことを、英語圏では一般的に「invasive plants(侵略的植物)」と言います。

「invasive」とは、自分のテリトリーから他のテリトリーに侵入して制圧してしまうことを意味します。

また、単に拡がりやすいことを指して、invasiveと表現することも多いです。拡がって厄介だよ、駆除しにくいよ、ということを言いたいわけです。

たとえば、竹(孟宗竹)は日本に定着して長い帰化植物ですが、非常に侵略的なので「竹害」として日本でも外国でも問題になっています。

 

生態系バランス

在来植物よりも外来植物のほうが問題になることが多いのはなぜでしょうか。

その生態系の在来植物(native plants)は、その限定された生態系において、他の植物とバランス(均衡状態)を保っているために、一つの植物が爆発的に増えることが少ないからです。

侵略的植物は、その場所にもともと存在していた植物や生物で構成される生態系バランスを壊してしまう可能性があります。場合によっては、一面がその植物で埋め尽くされてしまうのです。

 

外来種・在来種・侵略種

ややこしいので整理しましょう。

  • 外来種(exotic species):その生態系に外から持ち込まれた生物種。Non-native speciesともいう。
  • 在来種(native species) : その生態系に古くから存在する生物種
  • 侵略種(invasive speices):持ち込まれた生態系において爆発的に増え、他の生物種を脅かす生物種

tabiniwa ナガミヒナゲシ イラスト

「外来種であること」と「侵略的である」という特徴は、必ずしも一致しているわけではありません。これらの概念を分けて考えないといけません。

 

日本における用語の問題

外来植物は、英語では「exotic plants(エキゾティック・プランツ」と言います。

「エキゾチ〜ックゥ〜、ジャパン!」のエキゾチックですが、あれってつまり何がエキゾチックなのか意味を考えたことがあるでしょうか?

新幹線に乗って大阪に行くと、同じ国なのに言葉が変わる、エスカレーターの反対側に立つ。「え?ここ日本だよね?」あの感覚ですよ。だからもっと自分のテリトリーから出て、エキゾチックな日本を発見しようよ、と郷ひろみは歌っていたわけです。

かどうかは知りません(笑)。

ナガミヒナゲシ

要するに、外国に起源を持つものや、外国風なものを意味するわけですね。

一方、invasiveですが、先にも述べたように、これは「侵略的」とか「侵入してくる」という意味です。しかし、日本人は「侵略的植物」とは日常会話ではあまり言いません。

これは日本において、invasiveという概念があまり意識されてこなかったためなのではないかと思います。

自然に対して受容的な国民性であることや、鎖国をしていたので外国をあまり意識してこなかったこと、もともと生物種が豊富であることなど、いろいろ理由は考えられますが、「侵略」という言葉が、意思を持たない植物に使う言葉としては、日本語的に違和感があることも大きいと思います。

日本語は、こういう抽象概念を表現する名詞が少ない言語です。それでは不便なので、古来は中国から文字とともに輸入し、明治期にはさらに新しく作り、いまはカタカナ言葉も使っています。だから何かしっくりこない場合もあるんですよね。

ただ「外来植物」だけだと、問題のない植物も含んでしまうので、侵略的なのが問題なのだということが理解されにくい現状があります。

 

イタドリとモナークバタフライ

しかし、ナガミヒナゲシは、ぶっちゃけ侵略的植物のなかでは最弱・・・。もっとヤバイやつが日本から外国に持ち込まれて問題になっているんですよ。ちょっとついでなので紹介しますね。

tabiniwa オオカバマダラ イラスト

侵略的外来植物により影響を受けるのは植物だけではありません。生態系バランスの破壊は、他の生物種にも大きな影響を与えます。

たとえばアメリカにはモナークバタフライ(オオカバマダラ)という蝶がいます。この蝶は渡り鳥のように集団で長距離を移動することで知られています。

ところがこのモナークバタフライの数が近年減少しています。さまざまな理由がありますが、日本から持ち込まれたイタドリが原因の一つであるとされています。

tabiniwa モナークバタフライ イラスト

モナークバタフライは、ミルクウィード(トウワタ)という植物の葉に卵を産みます。幼虫はミルクウィードの葉っぱしか食べません。

野生化したイタドリがはびこり、背の低い植物に日光が当たらなくってしまった結果、モナークバラフライの繁殖に必要なミルクウィードが減り、個体数が減る一因となっているのです。

モナークバタフライが減ってしまうと観光資源が減りますね。観光地で売ってる「オオカバマダラまんじゅう」が売れなくなるわけです。人間も困っちゃいますね。売ってるかどうか知りませんが(笑)。

このように生態系の変化は、ドミノ倒しのように影響が広がっていく可能性があるわけです。

 

おわりに

生態系バランスを崩すことは、他の生物にも深刻な影響を与える可能性があります。生物多様性を守るには、侵略的外来種の駆除を行う必要があるのです。

そしてだいたい、影響に気づいたときにはもう手遅れなんですね。人間に自然を完全にコントロールするのは不可能です。予防的に対策をとることが必要です。

ただナガミヒナゲシの場合、この日は土手や公園にも散歩に行ったのですが、まったく生えていないです(管理してるから?)。

でも庭の場合は、広がると駆除が厄介だから、タネができる前に抜いたほうがいいかなと思います。

絶対抜かないとダメってものでもないですし、そこまで神経質になるものでもないですが、一応知識としてね。

ではまた〜。

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