寒くなってくるとぷっくりした葉の先端が赤くなる乙女心。育てやすい多肉植物ですが、夏の暑さは少し苦手です。夏の世話の注意点や増やし方など育て方のポイントを解説します。
乙女心(Sedum pachyphyllum)
乙女心(おとめごころ)はセダムの一種で、学名のパキフィラム(pachyphyllum)はラテン語で「葉が厚い」という意味です。
セダムなので育てやすく、また増やしやすいので初心者が最初に購入する多肉植物のひとつだと思いますが、夏の高温多湿は苦手なので、少し調子を崩すことがあります。
逆に言えば、夏さえ乗り越えれば、少し見た目が悪くなっていても秋からのリカバリは早く、冬から春にかけてきれいな紅葉を楽しむことができます。
夏越しのポイント
高温多湿が苦手なので、夏は風通しの良い半日陰に置きます。ただしあまり過保護にすると徒長してしまうので、暗めなところに置いた場合は水やりを控えたほうがいいです。
昨年8月のようすです。下葉が落ちてきました。古い下葉が黄色くなってポロポロとれてしまいますが、関東地方内陸部の南向きのベランダなので、わりと仕様です。
葉は落ちますが、新しい葉が出てきているかぎり、そんなに心配しなくて大丈夫です。
水が足りないと思って水やりを増やしたりすると、葉が落ちて水の必要量が減っているわけなので、土が乾かず、よけいに悪化するかもしれません。
下葉を落として風通しをよくしているんだと思って、涼しくなるまでじっと見守りましょう。ただ茎が黒く腐ってくるような場合は、雑菌が全体に広がるのを防ぐために緊急手術をしたほうがいいかもしれません。
水はわりと好き
乙女心は保水性が少し高めの土を好みます。赤玉土のみのプランターに植えてあるものは、ずっと小さいままで干からび気味です。他の多肉よりも水の必要量が多いようです。
おそらく水不足で成長がストップしている乙女心。だけど周りの多肉はそこまで干からびていないのです。
これもね。水をあげたくなるんですけども、同じプランターで先日エケベリアが1つ腐っていたこともあり、乙女心に合わせると周りに植えてある多肉にとっては水が多くなってしまいます。
水やり多めでも大丈夫なのと一緒にするといいかな、と気づきました。そうしよう。
秋から初夏までにプリプリに大きく育てておけば、夏は水を控えても大丈夫ですし、葉は多少落ちますが、夏場のダメージを乗り越えやすいです。
水やりの回数が多すぎると蒸れや根腐れにつながりますので、水やりの回数で調整するのではなく、園芸用培養土など少し保水性の高い土を多めに混ぜてあげると、ほどほどの水分が維持できて育ちが良くなると思います。
カビにも注意
去年の秋は大型台風が何度も来て、ずっと雨ばかりだったのでベランダの植物にカビが出てしまいました。あまり風通しがよくないので、大きく育ったゼラニウムまで黒カビが・・・。
エケベリアのオリビアというのが一番ひどい被害を受けたのですが、乙女心も少しカビが出ました。黒いカビがついた葉が、チリチリになって落ちてしまいます。
その翌年、6月下旬の現在のようすは・・・。
こんな感じ。少し下葉の色がまた悪くなってきていますかね。まだ本格的な夏はこれからだぞ。
この「リハビリ鉢」にはカビが出た多肉を植えています。テラコッタの鉢なので乾きやすいのですが、プランターの干からびてるのよりはましですね。赤玉土に観葉植物の土を混ぜてあります。少し保水性があるかもしれませんね。あとであっちのも救出しようかな・・・。
乙女心はずっと植え替えしないのもあまり好まない感じがします。枯れませんが、だんだん成長が悪くなります。根詰まりか、肥料がほしいのか・・・。株の老化もあるかな。
乙女心の増やし方
挿し木が容易なので、基本的には挿し木で増やすことをオススメします。でも葉挿しでも芽は出ます。
これは買ったときの写真ですが、右の株元に葉っぱが1枚落ちていて、発根・発芽しています。
ただこのまま観察していて思ったのですが、成長が遅いですね。挿し木を発根させて増やしたほうが早くて簡単です。
これはてっぺんを切ったらしい乙女心の現在。下から出ていた芽が伸びて、株立ちになっています。
植物の多くは「頂芽優勢(ちょうがゆうせい)」といっていちばん上にある芽の成長が促進される性質を持ちます。頂芽の生産する植物ホルモン(オーキシン)が側芽の成長を抑制するためです。
つまり頂芽が切られてオーキシンの濃度が下がってくると、側芽が成長し始めるわけです。
でも切らないでそのままにしておいても、乙女心の場合、枝分かれはしますね。これは全然カットしてないみたい。元気だったらポコポコ芽が出ますよ。
オーロラです。乙女心よりも頂芽優勢の性質が強いみたいです。上に伸びてるみたいに見えますが、重さで横に倒れています。茎が横に倒れてくると頂芽優勢が崩れるので、下からも芽が出やすくなります。上を切ればさらに下の芽が伸びるんでしょうけど、なんか面白いから切れない・・・。
挿し木の適期
弱っている夏に仕立て直したくなるのですが、追い討ちをかけることになるので、避けたほうがいいと思います。
緊急に必要なら仕方ないですが、乙女心は弱っているときにはどんどん葉が落ちます。春にカットする場合も、夏までにしっかり根を張らせることができるかを考えましょう。
しっかり根が張っていないと高温多湿によるダメージを受けやすいです。鉢に根が回っていないと土の乾きが遅くなるためです。
虹の玉っぽいですが、大雪の降ったときの乙女心です。
寒さには比較的強いので、秋でも可能ですが、まだ蒸し暑い時期や台風の時期は避けたほうがいいかもしれません。
おわりに
夏だけちょっと注意が必要ですが、それ以外の季節はわりと育てやすい乙女心。
気持ち保水性高めな土。秋から春は気持ち水やり多め。夏は気持ち水やり控えめ。
「気持ち」がポイント!
気持ちで乗り切る、多肉の夏、緊張の夏。
乙女心はよほどのことがないと枯れるまでは行きませんが、うちのほうだと多肉植物の栽培は、夏が一番難しいですね。
今年の夏は、大型台風とか大雨とか大きな災害がないといいですね。もう正負の法則的に言って、2020年下半期はアガるしかないと思うんですよ。
だからきっと皆さんにも後半はいいことありますよ。
たぶんね(笑)。
ではまた。