イギリス一の陶器産業の町、ストークオントレントでファクトリーツアーや絵付け体験をしてみませんか。
ストークオントレントにある3つの窯元(エマ・ブリッジウォーター、バーレイ、ウェッジウッド)訪問記。第1弾は、スポンジ絵付けの水玉模様がかわいいエマ・ブリッジウォーターをご紹介します。
斜陽の町(笑)ストークオントレントの地域起こし協力隊(そんなのあった?)隊員として、予約方法、行き方、絵付けのやり方など網羅的に書き尽くしたいと思います。
目次
ストークオントレントの楽しみ方
ストークオントレントでは、
- 工場を見学して陶器製造や産業革命について学ぶ
- アウトレットでお得にお買い物をする
- 絵付け体験で陶芸に目覚める
と、さまざまな体験ができます。
なかでもおすすめなのはエマ・ブリッジウォーターでの絵付け体験! 一人でも平気ですよ。ただし、ファクトリーツアーも絵付け体験も予約が必要。のちほどご説明します。
歴史ある職人の町、ストークオントレント(Stoke-on-Trent)
ストークオントレントは産業革命の時代に大規模な陶器産業が生まれた歴史ある町です。
ウェッジウッド創業者、ジョサイア・ウェッジウッドの創意工夫と産業革命によるさまざまな技術革新が、この町をイギリス一の陶器産業の町にしました。
しかし1980年代以降は、安い外国製品におされて陶器メーカーの破綻が相次ぎ、生き残った企業も安い労働力を求めて外国に工場を移転したため、たくさんあった工場はつぎつぎと閉鎖されてしまいました。
近年では、チャールズ皇太子が代表を務める「The Prince’s Regeneration Trust」がミドルポート・ポタリー(バーレイ)の維持に900万ポンドを投じ、歴史的建物の保存に一役買ったことが話題になりました。
そんな陶芸の町ストークオントレントに1985年に生まれた新しいブランドがエマ・ブリッジウォーターです。
エマ・ブリッジウォーター(Emma Bridgewater)
スタンプによる素朴な絵柄がかわいいエマ・ブリッジウォーター。1985年の創業で、ストークオントレントにある陶器メーカーのなかでは新しい企業です。
エマ・ブリッジウォーターが誕生したのは、創業者のエマ・ブリッジウォーターが母親の誕生日のためにプレゼントを探していたことがきっかけでした。当時の陶器は、「フォーマルすぎて日常使いに適さないもの」か「優れたデザインではないもの」しかなかったそうです。美しさと実用性を兼ね備えたものが市場にない、と気づいたエマは「エマ・ブリッジウォーター」を設立します。
創業初年の売上高は3万ポンド(422万円)。人々のニーズをつかんだエマの陶器は好評を博し、その後も着実に成長を続けます。創業25周年にあたる2010年の売上高は1100万ポンド(2017年8月のレートで約15億5000万円)、180人を雇用しています。
エマの夫で、デザイナー、画家、作家のマシュー・ライスもエマの陶器のデザインをしています。水玉模様のスポンジウェアがエマのデザイン、文字や動物を特徴とするBlack Toast Lineがマシューのデザインです。2人は1987年の商品展示会で出会い、エマが陶器を、マシューが文房具を販売していたそうです。夢あふれる若い2人という感じでいいですね。2人は「なにより自分が気に入る、自分が家で使いたいと思うようなデザイン」をするように心かげているそうです。
エマ・ブリッジウォーターのクリーム色の陶器は、ストークオントレントにあるビクトリア時代のレンガ建ての工場で、ひとつひとつ人の手でつくられています。また自分で絵付けをすることもでき、プレゼントやお土産にも最適です。
工場にはカフェやガーデンも併設され、ランチやアフタヌーンティーを楽しむことができます。
エマ・ブリッジウォーター工場訪問記
前置きが長くなりましたが、訪問記スタートです。前泊地のバンブリーからストークオントレントへ移動します。
ストークオントレントに行く電車のなかで、通路をふさいでいたわたしのキャリーバッグを親切な若者が持ち上げてくれました。ジャージー島の出身で、近くの大学に通っているそうです。日本人留学生の友達「カズ」がいると言っていました。カズくん、知らないけど、留学がんばれ。
ストークオントレント到着。ホテルへタクシー、4.5ポンド。
ホテルで休憩して、さっそくエマ・ブリッジウォーターに向かいました。ファクトリーツアーまで時間があるので歩いて行きました。
到着しました。看板がかわいいですね。
ファクトリーツアーの前に何か食べておきたいので、すみやかにカフェに移動します。この棚は写真でよく見ますね。この前の席で食べました。お昼時は地元の人で混んでいます。
ショップは、正規品を置いてあるお店とアウトレットのお店と2つあります。アウトレットのほうに行きます。
同じものが正規のほうで15ポンド、アウトレットで11ポンドだったので、そこまで値引き幅は大きくない気がします。
陶器の製造を見学
ファクトリーツアーの集合場所は、アウトレットのほうのお店のレジ横です。ガイドさんがいて、首にかけるタグをくれます。
工場内はあまり人が多いと危険なので、人数が制限されています。最初に工場の歴史や注意事項の説明を受け、ガイドさんと一緒に工場の中へ入ります。
粘土をこねて液体状にする機械だったと思います。こんなものまで水玉模様でかわいいですね。前にある粘土のくずは製造過程で出た不良品で、またリサイクルして使用するそうです。地球に優しい!
液体状の粘土がパイプを通って黄色いホースから出てきます。これを型の中に入れます。粘土を入れたらがっちりバンドでしばります。
型から取り出したら乾燥させます。最初は灰色で、水分が抜けるとだんだんと白くなっていきます。このままでは型のあとがついているので、焼く前に表面を磨いてなめらかにします。イギリスらしくWham!のWake Me Up Before You Go-Goの流れるなか、数人の女の人が水をつけたスポンジで磨いています。けっこう地味でたいへんな作業です。
磨き終わったら炉で焼成します。わたしは、あまり陶芸には詳しくないのですが、素焼きしてから絵付けし、その上から釉薬をかけて焼成するのを日本では「下絵付け」というそうです。ストークでは3ヶ所の窯元を見学しましたが、基本的には同じでした。
こちらはスポンジではなくプリントの絵付けです。素焼きした皿にプリントされた絵柄を貼り付けます。焼くと黄色い部分がなくなって、絵柄だけ残ります。
スポンジ絵付け部門では、女の人たちが黙々と素焼きにスポンジを押しています。なかにはかなり大きなものもあります。毎日やっていると楽しくないかもしれませんが、短期ならここで働きたいです。さらにスポンジの作成のみを担当するスポンジ職人の女性もいます。
基本的に力仕事のほうは男性、絵付けは女性と分かれています。エマ・ブリッジウォーターは1985年の創業ですから当てはまらないのですが、ガイドさんが言うには、産業革命の時代には女性も力仕事をしていて、しかも同じ仕事をしても男性の半分しか給料をもらえなかったそうです。
絵付けされた水玉模様のマグ。さすがプロの仕事で、模様にかすれやにじみがありません。このあと釉薬をかけて再び焼成し、絵の具を定着させます。
完成! 水玉とカラフルという2大かわいい要素が融合したデザイン。
そしてMade in England。お土産に最適ですね。
いざ、絵付け体験へ!
楽しみにしていた絵付け体験に行きます。このDecorating Studioという建物が絵付け体験のできるスタジオです。予約必須です。詳しくは、まとめてのちほど。
日本まで送ってもらう場合には、35ポンドの送料がかかります。1個でも複数でも同じだそうなので、合計2個絵付けしました。ちょっと送料が高いですが、焼成して約2週間後に発送してくれます。しっかり梱包されて19日目に届きました。
絵付けの方法
絵付けの方法は係りのお姉さんが説明してくれますが、簡単にご説明します。
予約の紙を見せて受付をすませたら、素焼きの皿が置いてある棚に行き、絵付けしたいものを選びます。マグカップはハーフパイントの大が15ポンド、中が11ポンド、ミニが7ポンドです。わたしは11ポンドのを選びました。小さめのマグです。小さな皿は5ポンドからあります。レジに行って材料費と郵便料金を払います。
スポンジの棚に行って、好きなスポンジを選びます。ダブルデッカーバス、ミツバチ、花、鳥、恐竜、木、ハート、文字、星、ティーカップなどなど、いろいろなスポンジがあります。
好きな色の絵の具をパレットにとります。絵の具の色がそのまま発色するわけではないので、どの絵の具がどの色かを忘れないようにしましょう。蓋の数字で区別します。机の上に色サンプルがあります。
スポンジをテーブルに用意されている水につけて、ぎゅっと絞ります。しっかりと絞らないと滲みますし、あまりかさかさでもかすれます。
絞ったスポンジに絵筆で絵の具をつけます。色分けする場合には、絵の具が混ざらないよう絵筆を変えます。
色をミックスするとどんな色になるかわからないので、なるべく混ぜないほうがいいそうです。色を重ねた場合、濃い色の下の薄い色は見えなくなります。
スポンジを皿の表面にぎゅっと押し付けます。失敗してしまったら、ヤスリでこすればきれいになります。
手順は以上です。
- わたしはマグを選んだのですが、皿のほうが平面なのでやりやすかったかもしれません。
- 最初は何度か失敗すると思うので、小さい簡単な絵柄のスポンジから始めるといいと思います。きれいに押すにはスポンジの絞り加減や押し加減などコツがいります。コツがつかめたら、大きなスポンジや色分けにチャレンジしましょう。
- 裏面にエマ・ブリッジウォーターの社名スタンプが押してあります。触ると絵の具がかすれるので、なるべく触らないようにしましょう。
- かすれやにじみも、できあがってみるといい具合に味になります。
- 子供でも楽しめますし、大人もたくさんやっています。みなさん作業に没頭していて、黙々とスポンジをペタペタしたり、ヤスリをシャッシャしたりしています。
- スタジオはファクトリーの営業時間と同じで5時半までやっています。
ビジターの皆様の芸術作品が焼かれるのを待っています。みなさんデザインセンス抜群ですね。きっとかわいいお皿になるでしょう。
こんなんできました。左が1個目で、右が2個目です。2個目のほうが、コツがつかめたので上手になっています。家族へのお土産です。時間があれば、もう1個つくりたかったです。
それから19日後のある日・・・。
ピンポーン、イギリスからお届け物です。
キター!!!!
お恥ずかしながら、どーん。
反省点はありますが、面白かったので、また絵付けやってみたいなあ、と思いました。
ストークオントレントに行ったらぜひチャレンジしてみてください。
エマブリッジウォーターへの行き方
エマブリッジウォーターの工場のあるストークオントレントへは、ロンドンのユーストン駅からミッドランド鉄道(London Midland Trains)で行くことができます。
・ノンストップ(約1時間半)片道16ポンド〜
・8駅ほど停車する準急(約2時間20分)片道9ポンド〜
切符の購入は早めに
イギリスの鉄道には「先割」のようなシステムがあり、切符の売れ行きに連動して価格が変化します。予定が決まったらナショナルレイルのウェブサイトまたはTrainlineで事前に購入することをおすすめします。
ストークオントレント駅からの地図
車4分、バス・徒歩12分、徒歩23分
エマ・ブリッジウォーター・ファクトリーの営業時間
月曜〜土曜 9:30〜5:30
日曜10:00〜4:00
祝日10:00〜4:00または休業
工場見学 Factory Tour
人数制限があるため事前予約必須です。
月曜〜木曜 10:00、11:30、1:30の3回
金曜 10:00、11:30の2回
料金 大人2.50ポンド 16歳以下は無料(5歳以上が参加可能)
所要時間 約1時間
工場見学に参加した場合、プリントアウトしたチケットを見せ、12.95ポンド以上のお買い物をすると割引が受けられるそうです。わたしは割引してもらうのを忘れてしまいました・・・。
絵付け体験 Decorating Studio
9:30から2:45まで1時間半の枠で申し込みを受け付け
スタジオ利用料 2.95ポンド
素焼きの陶器代 大きさによって異なります。
郵便料金 イギリス国内5ポンド、日本35ポンド(1個でも複数でも同じ)
予約ページ
ファクトリーツアー(Factory Tour)
絵付け体験(Decorating Studio)
上記のサイトを開きます。
- 「Buy Now」をクリックします。
- 希望の日付をクリックすると時間が表示されるので、希望の時間をクリックします。
- Quantityで人数を選択し、Add to Basketをクリックします。
- 次のバスケットの画面でPayをクリックします。
- 次の画面で会員登録を行います。会員登録をしない場合には、右側のCheck out as Guestをクリックします。
- 次の画面で支払い情報を記入し、最後にPayをクリックします。
- チケットをプリントアウトします。
以上、2017年6月の情報です。ロンドンから日帰りもできますから、陶器に関心のある方はぜひ行ってみてください。
ロンドンにもお店があります
メリルボーン・ハイストリートにお店があるので、ストークオントレントに行かなくても購入できます。
所在地 81A Marylebone High St, Marylebone, London W1U 4QL イギリス
ベイカーストリート駅から徒歩7分
営業時間
月曜 | 10am – 6pm |
火曜 | 10am – 6pm |
水曜 | 10am – 6pm |
木曜 | 10am – 7pm |
金曜 | 10am – 6pm |
土曜 | 10am – 6pm |
日曜 | 11am – 5pm |
(2017年8月現在)
興味があったら行ってみてくださいね。