ストークオントレントの陶器工場訪問記第3弾は、バーレイ社(ミドルポート・ポタリー)です。こちらでは、もちろんアウトレットショップでお買い物も楽しめますが、時間があればファクトリーツアーで工場内を見学するのもおすすめです。
ビクトリア時代に建設された工場は、ストークオントレントの陶器産業の繁栄をいまに伝える重要な産業遺産です。バーレイ社の歴史に触れ、銅板転写による陶器の製造工程について知ることで、購入した食器がより思い出深いものになることでしょう。
第1弾のエマ・ブリッジウォーター、第2弾のウェッジウッドもあわせてご覧ください。
ではバーレイ編スタート!
目次
バーレイ(Burleigh)社
バーレイ社の創業は1851年。創業者はFrederick Rathbone BurgessとWilliam Leighで、もともとの名称はBurgess and Leighといいます。発音は「バーリー」が近い・・・かな。
ウェッジウッドのほうが創業1759年ですから100年ほど古いのですが、バーレイ社を訪問する価値は、このレンガ建ての古い建物で現在でも生産が行われているという点にあります。このレンガと看板が「男前インテリア」っぽいですね。
バーレイ社では現在でも「銅板転写」と呼ばれる昔ながらの製法で陶器を製造しています。200年前にイギリスで生まれたこの技術は、かつては一般的な製造方法でしたが、当時と同じ伝統的な方法で製造しているのは、現在ではここだけになっているそうです。
工場は、地元ではミドルポート・ポタリー(Middleport Pottery)の名で親しまれ、トレント・マージー運河のほとりにたっています。完成した陶器は、この滑車を使って船に乗せ、この運河を通って出荷されていきました。
ヴィクトリア時代建設の窯です。もともとは、この横にいくつも窯が並んでいたのですが、この1棟だけ現存しています。手前のレンガが壊れたようになっているのは、隣の窯と接していた部分です。
ペンキ塗りの作業中です。貴重な建物であるため、ペンキの色も指定されたものを使用する必要があるそうです。
現在の工場が建設されたのは1888年。しかし数年前にこの工場は、閉鎖の危機に追い込まれました。工場は荒れ果て、維持に莫大な資金がかかるためバーレイ社は移転を検討。工場が移転すればストークオントレントにとっては大きな打撃です。
それを救ったのはチャールズ皇太子が代表を務めるPrince’s Regeneration Trustでした。2011年6月に工場を買収し、900万ポンドを投じて3年にわたる改修工事を実施。2014年7月に一般公開されました。
アウトレットショップでお買い物
工場見学が始まる前に時間があったので、アウトレットショップを見学しました。
正規品のお店(のちほどそちらもご紹介)とアウトレットがありますが、お買い物をするならアウトレットのほうがおすすめです。小さな皿やボウルは、たしか5ポンドからありました。でも大きいものはアウトレットでもそれなりにします。
いっぱい揃えるとかわいいですね。こういう食器棚ほしい。
わたしはBlue Regal Peacockという柄の8.40ポンドの青いボウルを1つ購入したのですが、もっと購入しておけばよかったような・・・。分厚くて丈夫なので意外と使いやすいです。よく見ると、わずかな印刷のズレやかすれがあるために、アウトレットの商品になっているようです。1枚1枚違いますから、よーく見て購入してください。
帰ってきてから買いたくなる。旅行あるある、じゃないですか?
黒もいいなあ。と、写真を撮っていると、イギリス人の高齢のご夫婦に声をかけられました。同じくツアーに参加するそうです。運河沿いを自転車で来たそうです。脚がすごい若々しいです。
バーレイ社ビジターセンター
ビジターセンター内は、ガイドなしで見学することができます。ビジターセンターのみの料金は大人4ポンドです。ミュージアム部分はファクトリーツアーではまわりませんが、ツアーの料金(8ポンド)には含まれていますので、前後に各自見て回ることができます。
陶器製の工場模型。このようにかつては窯がいくつも並んでいました。さぞかし活気があったことでしょうね。
こちらはミュージアム1階。アンティーク家具がかわいい。丸いキャビネット、収納性は低いですけど、いいなあ。
こちらは2階。この上からぶら下がってる紙が、銅版で刷られた転写紙で、これを素焼きの陶器に貼り付けます。ミュージアム内はそれほど広くなく、ぱぱっと見られる感じです。
工場内を見学
ファクトリーツアーは先ほどの模型の前からスタートし、まず歴史の説明を受けます。そのあと、外に出て、運河の前で説明を受け、窯の前で説明を受け・・・、と、かなりみっちり説明してくれます。
ひとつひとつこういう型に粘土を流し込んで焼きます。後ろの人形は精巧ですね。失敗したものは、再び粘土に戻されます。
現在はガス釜を使用し、1000度で焼成するそうです。型のあとがギザギサしていますので、これをブラシで磨いたのちに、絵付け部門に送られます。
こちらが銅板印刷された転写紙です。半紙のような薄紙です。
職人さんが、素焼きされたボウルに貼り付けていきます。絵付け部門で働いている人は、ほぼ女性です。
このあと再び焼成します。すると絵柄のみが残ります。そしてその後、釉薬をかけて再び焼成します。つまり3回焼くわけですね。いいお値段になってしまうのも仕方ないですね。
そして完成。美しい。こんなのいっぱいぶら下げたい。なぜいまになってこんなにほしくなるのか・・・。
ツアーはさらに続き、このあと昔の窯の中を見学します。
陶器工場での労働がどれだけきついものであったかが想像できます。並んでいるのは陶器を入れる容器です。この容器に型に入った重い陶器をいっぱい詰め、それを頭に乗せて運び、はしごで上へ上へと積み上げていきます。ものすごい重さですし、煙突のようなものですから肺も悪くしたそうです。なんというブラッ(自粛)。
蒸気機関は、ツアー開始後もう2時間もたっているせいか希望者のみということで、3名のみでした。ガイドさんが鍵をとってきて、蒸気機関を動かしてみせてくれます。
この蒸気機関は、地元バーズレムにあるウィリアム・ボールトン社によって製造され、工場に動力を供給し、1978年まで使用されていました。ピカピカなのでまるで新品のように見えますが、2015年に寄付金を募って修理し、動かせるようになったそうです。
写っているのはガイドさん。とても熱心に説明してくれました。
正規品ショップ
ツアー解散後、再びショップに戻り、アウトレットの上にある正規品の売り場を見学しました。美しい完成品がディスプレイされています。
緑の壁とか緑の窓枠っていいな。イギリス人ってこういうのつくらせるとセンスありますね。ドレスは個人的にはないほうがいいと思うけど。こちらにあるものは結構なお値段がします。
カフェもあります
ここのカフェもなかなかかわいいので、お昼時であればランチなどいかがでしょうか。きゅうりとチーズのサンドイッチ(オレンジジュースとあわせて5.50ポンド)。味は普通ですが、お腹いっぱい。
節約旅行なので、いつもお昼はこんな感じで、夕食もテイクアウトなどですませます。朝ごはんだけは宿でしっかり食べます。
ミドルポート・ポタリー(バーレイ)への行き方
わたしはHanleyという地区にあるホテルに泊まっていて、ファクトリーツアーが10時半からだったため、Burslemまでバスで行き(2.20ポンド)、そこから歩いて行きました。Burslemではエドワード様式の美しい建物を偶然見つけたのですが、かつての芸術学校だったそうです。
駅からであればタクシーでもそれほどかからないと思うので、タクシーかuberがおすすめです。
交通手段検索サイトのRome2rioによると、ストークオントレントの駅からミドルポート・ポタリーまではuberだと750円から1200円だそうです。uberは車の空き具合に連動するので、混んでいるときは高い金額が表示されます。
またLongportという駅が運河の反対側にあるので、そこから歩くこともできそうです。ただ人気がなさそうなのでお気をつけて。
料金
ファクトリーツアー
大人 | 8.50ポンド |
8歳〜16歳、学生(学生証提示)、高齢者(65歳以上) | 7.00ポンド |
安全上の理由により8歳以下はツアーに参加できません。ツアーは予約必須です。急な階段が多いため車椅子の方は事前に電話で相談してください、とのことです。
ビジターセンター
大人 | 4ポンド |
5歳〜16歳、学生(学生証提示)、高齢者(65歳以上) | 3ポンド |
5歳以下 | 無料 |
ファクトリーツアーの開始時間
月曜〜木曜 11:00と14:00の2回
金曜 10:30のみ(金曜日は少し働いている人が少ないそうです)
ファクトリーツアーの予約方法
- ファクトリーツアーのページにあるBook a Tourをクリックします。
- 次の画面で希望日を選択します。
- 次の画面で希望時間を選択します。
- Quantityの欄に人数を入力し、Add to Basketをクリックします。
- 申し込み内容を確認してCheck out with Paypalをクリックします。
- Paypalで支払いをします。
- チケットをプリントアウトして、当日持参します。
オンラインショップ
バーレイのオンラインショップは、日本からも購入できます。ただし送料がかかります。
購入金額 | 日本への送料 |
50ポンドまで | 40ポンド |
51〜150ポンド | 80ポンド |
151〜300ポンド | 120ポンド |
301〜600ポンド | 160ポンド |
600以上 | 200ポンド |
ストークオントレントの3工場ツアーまとめ
今回のストークオントレント訪問では、エマ・ブリッジウォーター、バーレイ、ウェッジウッドと3ヶ所の陶器工場を見学しました。最後に、それぞれのファクトリーツアーの違いや個人的印象をまとめます。
バーレイ
古い陶器工場・製法に関心がある方におすすめです。歴史あるレンガの建物が雰囲気があります。工場見学もする場合は、それだけで2時間かかる可能性があるので、お買い物をふくめると3時間ほどは必要でしょう。
エマ・ブリッジウォーター
1時間ほどで陶器の製造工程が見られます。料金も一番安く、絵付け体験もあわせて楽しめるので、一番バランスがとれているかと思います。絵付け体験はお子さんにもおすすめです。工場見学と絵付けを両方するのであれば、絵付けにどれくらい時間をかけるかにもよりますが、2〜3時間は必要だと思います。わたしはランチ、ショッピング、工場見学、絵付けをして4時間半いました。
ウェッジウッド
ビジターセンターにある近代的工場は、上の2つと比べるとやや雰囲気に欠ける印象を持ちました。博物館はウェッジウッドの歴史に触れたい方にはおすすめですが、興味がなければアウトレットストアでいいかも。一方、車椅子の方でも問題なく見学できるのはウェッジウッドです。すべてのエリアが車椅子でアクセスできるようになっています。
情報が正確でない可能性もありますので、お出かけになる際は公式サイトのほうでもご確認ください。