イギリス南部のタンブリッジウェルズにあるお宿「ザ・ヴィクトリアン」。一軒家をヴィクトリア時代風に改装したユニークなベッドアンドブレックファストです。古き良き時代を愛する元執事のハロルドさんがおもてなししてくれます。
The Victorian B&B
ロンドンから電車で約1時間の場所にあるロイヤル・タンブリッジウェルズ。鉱泉が出るために王室の保護のもとで保養地として発展した町です。
そんな歴史ある小さな町タンブリッジウェルズにある「ザ・ヴィクトリアン」は、元執事のハロルド・ブラウンさんが経営するユニークなベッドアンドブレックファストです。
ハロルドさんはロイヤルヴィクトリア王室勲章も受章されている元執事で、ヴィクトリア時代や王室ゆかりのアイテムのコレクターでもあります。もともとはオーストラリア出身なのですが、10代後半に祖父母の国であるイギリスに単身渡り、貴族のフットマン(従僕)の職に就き、その後、長年にわたって執事として働いていたそうです。
ハロルドさんについてはテレグラフのウェブサイトに記事があります(英語)。記事によると、執事が登場する映画やテレビドラマ(『日の名残り』『ゴスフォード・パーク』)でアドバイザーを務めたこともあるそうです。引退後にタンブリッジウェルズに移り住み、ベッドアンドブレックファストを経営されています。
わたしが泊まったダブルのお部屋です。じつはここは、もともとこんなふうだったわけではなく、普通の一軒家をハロルドさんがヴィクトリア時代風に改装したそうです。普通の一軒家と言っても建築されたのは1861年ですが。
ここはバスルームです。トイレの隣にはこんな立派なステンドグラス。テレグラフの記事によると、アーツアンドクラフツ運動に参加していたウォルター・ピアースというアーティストの作品のようです。
ここから入ってくる光がとてもきれいでした。このお部屋は道路側に面していますが、住宅街なのでうるさくはなかったです。
これなんだと思いますか。トイレです。ふたを開けるとトイレになっています。もちろん水洗トイレですが、ヴィクトリア時代のトイレだそうです。
シャワーブースの上にもステンドグラスっぽい感じの装飾。いくらイギリスでもこんなバスルームはあんまりないですね。ちょっと何か壊さないかドキドキしますが。
壁紙もきれいでした。ウィリアム・モリスのゴールデンリリーです。バスルームにこの壁紙って考えてみるとすごい。カビないんだろうか。
50センチなら買えるけど・・・。トイレの壁紙がいまいちなんだよな〜。はあ〜、いいわ〜。
朝食はここで。お部屋が3つあるので、時間しだいでは他のお客さんと一緒になります。ドイツからきた親娘で、車をレンタルして2週間かけてガーデンめぐりをしているそうで、今日はチャートウェル(チャーチルの自宅)に行くと言っていました。
ハロルドさんは王室ゆかりの品のコレクターなので、質問するとそれは熱心にいろいろ教えてくれます。
日本で出版されている「愛のヴィクトリアン・ジュエリー」という本にも寄稿されていて、その本を見せてくれました。もちろん日本語に翻訳されているので「自分は読めないけど」と笑っていました。
時間があったらもっとお話ししたかったのですが、1泊だけだったので少ししかお話しできなかったのが残念です。何でもそうですけど、一つのことにこれだけ熱意を持っている人のお話しって面白いですよね。
コロネーションチェア(戴冠式の出席者用の椅子)です。左のがエリザベス2世の戴冠式に使用されたもののようです。ウィキペディアに同じものが載っています。
ここでハロルドさんの写真を撮ったのですが、お元気でしょうか。わたしが行ったのは2017年6月なので少し前です。予約サイトで調べてみたら、予約をいま受け付けてないようなので心配です。今年の1月に泊まったというコメントはありますが・・・。
飾ってある古い写真には、英国だけでなく外国のものもあり、日本のもあるよ、と言って、秩父宮勢津子さまの写真を見せてくれました。調べてみたらロンドン生まれで英語が堪能だったんですね。
なんと言ってもすごいのは、普通の住宅を個人で改装していることです。この階段の壁の下の部分は木彫りみたいに見えますが、これは壁紙だそうです。本当に近くで見ても木彫りに見える。上の壁紙は国会議事堂で使ってるのと同じって言ってたかな。
電車の事故のせいで到着が遅くなってしまったので、もしまた行くことができれば、夕方早めに到着したいです。翌朝も10時の電車だったので慌ただしく、ゆっくりできればよかったです。
そんなわけで、わたしが到着したときはすでに6時過ぎだったのですが、ハロルドさんは出かける用事があったにもかかわらず待っていてくれて、バラの咲くお庭に通してエルダーフラワーを出してくれました。
もっと早く行くとアフタヌーンティーを出してもらえるみたいです。サービスなので必ず出してもらえるわけではないと思いますが、4時ぐらいだといいんじゃないでしょうか。到着時刻をメールで連絡しておきましょう。
お庭もすてきです。このあとハロルドさんはお出かけされてしまったのですが、わたしのためにわざわざお友だちを呼んでいてくれて、その方が空いているお部屋を案内してくれました。
お友だちを呼んでいてくれたのは、わたしが到着が遅くなったにもかかわらず連絡をしなかったせいだと思います。この日はトラブルが多かったとはいえ、まことに申し訳ない・・・。
ツインのお部屋もすてきでしたが、ダブルのお部屋のほうが面白いと思います。3つお部屋があって、もう一つのお部屋はお客さんがいたので見られませんでした。
住宅街なので少し駅から離れています。荷物があるならタクシーのほうがいいと思います。6ポンドぐらいだったでしょうか。
小さな町ですが、雰囲気がいいところでした。商店街もセンスのいいお店があります。
予約
わたしはHotels.comで予約しました。Hotel.comで「Double Room 1 King Bed」を選択したら上記のお部屋になりました。お部屋の指定を確実にしたいならば、予約後にメールで問い合わせれば対応してくれるんじゃないかと思います。
ただ、上で述べたように、いま予約がとれないようです。混んでいるのか、休んでいるのか、ちょっとわかりません。掲載はされています。
おわりに
わたしはタンブリッジウェルズでもう一つブティックホテルと称するところにも泊まったのですが、そちらは働いている人が東欧からの若い外国人留学生ばかりでサービスがいまいちだったので、ここに2泊してもよかったと思いました。
ここでゆっくりお茶でも飲みたかった・・・。
イギリスはもう田舎町に泊まっても、オーナーも働いている人も外国人だったりします。すごく高級なところは別ですけれども。
昔は、看板も掲げていない、おばあちゃんが一人でやっているようなベッドアンドブレックファストがたくさんあったのですが、もうそういうのはなくなってしまったような気がします。
ツーリストインフォメーションに行くと紹介してくれて、行ってみると普通の家なんですよね。朝ごはんがすごいおいしかった。まあ近いものは今だとAirBnBで体験できますが。
イギリスだけでなく、世界からどんどん面白い場所や人が消えていっているような気がします。日本でもそうですけどね。ハロルドさんにお会いできてよかったなと思います。
ではまた。