1994年に亡くなったイギリスの映画監督デレク・ジャーマン。彼が生前に住んでいた家「プロスペクト・コテージ(Prospect Cottage)」が、ケント州ダンジェネスという場所にあります。
この庭は「Derek Jarman’s Garden」という写真集によって有名になり、デレク・ジャーマンの死後も彼のパートナーによって維持されています。
目次
デレク・ジャーマンの庭
わたしはデレク・ジャーマンの特別ファンというわけでもなく、「The Smithsのビデオを撮ってた人」として記憶していたのですが、数年前にこの庭の写真をはじめて見たときは、何かこう衝撃のようなものを感じました。いまとなっては、何がそう感じさせたのかよくわかりません(笑)。
というわけで、この目で見るために、はるばる最果ての地というほど遠くもないけど、原発があるせいかよくそんな感じで言われるダンジェネスまで行ってきました。
壁は黒、窓枠は黄色という「危険物カラー」でペイントされたこの家の正面左側の壁には、イギリスの詩人ジョン・ダン(1572〜1631)による「The Sun Rising(昇る太陽)」の詩の一部が書かれています。
一般に公開されているわけではなく個人の庭なので、庭の中までは入らないほうがいいと思います。
宿の人は「庭に入っても大丈夫よ」と言っていて、まあ大丈夫といえば大丈夫なのですが、他人の家の庭を勝手に歩くのは気がひけるので、遠くからズームで撮りました。遠くとはいえ道路から入ればそこも敷地でしょうから、ささっと静かに写真を撮りましょう。
おすすめの訪問時期は?
わたしの訪問日は2017年6月17日です。
冬はまた物悲しい感じがいいかもしれませんが、海沿いの土地なので、非常に風が強いのではないかと思います。
またそんなに広い庭ではなく、植物の種類も限定的です。写真を見ていただければわかりますが、レッドバレリアン、カリフォルニアポピーなどが咲いていました。初夏の暖かい日であれば、ビーチでも楽しめます。私が訪問した日はとても暑く、ダンジェネスの日差しを感じられる日でした。
ダンジェネスを歩いていて気づいたのは、プロスペクト・コテージの庭とは、デレク・ジャーマンの創造物というよりダンジェネスそのものなのではないかということです。ビーチから住宅地のほうまで、ずっとこの小石です。
日差しも風も強くタフな環境なので、普通に生える植物は非常に限られているように見えます。この環境をそのまま生かして植物を育てていたんだなあと。現地で見るとなるほどという感じです。
この野菜みたいなのはsea kale(ハマナ)という植物で、ダンジェネス一帯あちこちに生えています。ブドウみたいな実がついていておもしろいです。また、打ち捨てられた漁船もここだけでなくあちこちに置いてあります。
デレク・ジャーマンがエイズによって亡くなってから20年以上たちますが、いまでもこうして(当時とは変わっているでしょうが)維持されて、人々に記憶されているというのは、本人もよろこんでいるだろうと思います。
来るまでは「いまどんな状態かわからないし」と行くのを迷っていたのですが、ダンジェネスそのものが面白い場所だったので行ってよかったです。
最近「庭はなまもの」と考えるようになり、見られるうちに見ておかないとなくなってしまうし、それこそ1年単位で変わってしまうので、あるうちに見ておきたいなと思っています。
ダンジェネスのその他の見所
プロスペクトコテージの前を道なりに歩いて行くと、ロムニー・ハイス&ディムチャーチ鉄道の駅につきます。お店、レストラン、トイレもあります。
ものすごく小さい機関車で、大人は窮屈だと思いますが、子供向けアトラクションとしてイギリス人には人気のようです。日曜日だったので、イギリス人の家族連れでそこそこ賑わっていました。
駅の前にあるのが旧灯台です。暑くて疲れていたので、のぼるのはやめておきました。
灯台の前を通り過ぎて、原発のわきの道からビーチにでました。
坂になっているので、坂をのぼりきるまで海が見えなかったのですが、小石の坂の上に出ると、その先には、夢のように美しいビーチが広がっていました。
わたしのカメラの腕では、うまく写真に再現できていないのが残念です。
空と水平線がぼんやりと一体化し、小石がきらきら太陽の光を反射させています。黄色と水色とうっすらピンクのグラデーションの光の中に包まれ・・・・・・、ああ、言葉では表現できない!
ターナーの世界、かな。こういう光を見ていたんだなあと。
紫外線対策は必須ですね。
ざっくざっくと音を立てて歩きます。浜辺の小石がなぜこんなに大きいのでしょう。ゴミもまったくありません。遠く見えますが、灯台からビーチはすぐです。
人が少ない。
この日このあとタクシーでライの駅まで行ったのですが、途中の海水浴場付近でものすごい渋滞に巻き込まれ、30分ほどで着くはずが1時間かかってしまいました。
片側1車線の道なのに、ずーっと延々と車がビーチに向かっているのです。ダンジェネス側から行ったからなんとか抜けられましたが、反対側の車は駐車場も入れないし、横道もない一本道だからまったく動いていませんでした。
ライまでのタクシーは35ポンドでした。たぶん渋滞の分少し高いと思います。
回り道してダンジェネスに来れば、こんなにすいてるんですけどね。
ただお店とかはないです。こちらではみなさんのんびりと釣りをしています。奥に見えるのが原子力発電所です。
ダンジェネスへの行き方
いろいろ行き方はありますが、わたしの場合、ストークオントレントから行ったので、ロンドンにまず戻り、アシュフォードインターナショナルまで電車で行き、そこから11番のバスでダンジェネスに行きました(バスは片道5.70ポンド)。
イギリスの電車の切符は早めに買うと安い
イギリスの電車は複雑怪奇な変動制になっており、早めに買うと非常にお得になります。同じ目的地でも購入時期や曜日・時間帯によって、高い切符と安い切符の差がものすごくあります。また片道と往復が同じ値段であることが多いので、往復する場合には必ず往復で購入しましょう(別の日でも往復になります)。
また週末と月曜日は高めなので、長距離の移動はできるだけ週末を避けたほうがいいでしょう。早売りチケットは12週間前から販売になります。National RailやTrainlineで早めに購入しましょう。
Trainlineはワンストップで購入できるので使い勝手がいいのですが、手数料をとられます。National Railは各鉄道会社で決済します。また料金が両者で微妙に違うことがあります。
バスは本数が少ないので注意が必要です。必ずバスの時刻表で確認してください。Stagecoachのホームページはこちら。
移動の時間には余裕を持って
行きは、途中でバスが止まってしまい、何かなと思っていたら、鼓笛隊が出てきてパレードが始まりました。地元のお祭りのようです。楽しかったですが、おかげで30分到着が遅くなってしまいました。
帰りは、日曜日でバスの本数が少なく、次の目的地のルイスに行くにはちょうどよいバスがなかったので、ライの駅までタクシーに乗りました。先に述べたとおり、このときも30数年ぶりの暑い日をビーチで過ごそうとするイギリス人海水浴客の渋滞に巻き込まれました。駅に着いたら乗るはずの電車がホームにまだいたので飛び乗りました。
田舎の道は、何かやっているとすぐ渋滞です。列車指定の早売り切符を購入した場合には、購入した列車に乗る必要があります。
宿泊
ダンジェネスは不便なところなので泊まる人は少ないかもしれません。そもそも宿泊施設も少ないです。わたしはCastaways B&B and Guest Houseというベッド・アンド・ブレックファストに宿泊しました。
シャワー付きのシングルは40ポンド。宿の人も親切でした。ただし窓側が廊下になっているので、部屋には天窓しかありません。寝るだけなら気になりませんが。
デレク・ジャーマンの庭までは徒歩30分くらい、灯台のあたりまでは徒歩1時間弱くらいです。
独特の雰囲気があってとてもよいところだったのでまた行きたいです。ケント州を旅行するなら、ダンジェネスまでぜひ足を伸ばしてみてください。