ロンドン滞在中、ウィリアム・モリスが暮らしたレッドハウスを訪問しました。アーツアンドクラフツ運動の創始者であり、「役に立たないものや美しいとは思わないものを家に置いてはならない」という言葉で有名なモリスが若い頃に建てた家です。
レッドハウス
レッドハウスはウィリアム・モリスが妻ジェーンとの新婚時代に暮らしていた家です。
友人であった建築家のフィリップ・ウェブとモリスが共同で設計とデザインを行い、1860年に建築されました。
玄関ホールにある収納付きベンチ。扉に「ニーベルンゲンの歌」の一場面が描かれています。モリスが友人たちをモデルに描きました。
しかし未完成。一部の人物の顔が描かれていません。ガイドさんに話を聞くと、「モリスは顔を描くのが苦手だったといわれている」とのことです。最後まで完成していない作品が多いとか。そういえば、ストロベリーシーフの鳥の顔、とくに目でしょうか。あれだけなんか微妙だな、といつも思うんですが(笑)。
ガイドさんによると右端がエリザベス・シダルだとか。
まあ、こんなのを壁にささっと描いてくれる友達がいると、そういう気持ちになってしまうのもわからなくないですね・・・。エドワード・バーン・ジョーンズです。
犬がかわいい。ヨークシャーテリアみたいなふわふわした犬が、舌を出しているように見えます。
応接室の両脇に描かれています。中央にあるベンチは、モリスがもともと別の場所で使用していたものを分解して運び入れ、再びここで組み立てたそうです。
こちらは反対側。
せっかく力を入れて建築したにもかかわらず、モリスがこの家に住んだのは5年間だけでした。夏は暑く冬は寒く、体調が悪化したことが原因です。デザイン重視だとありがちよね。
モリスはコッツウォルズ地方にあるケルムスコットマナーに移り、レッドハウスを売却します。
しかしその後の持ち主が壁画の上にペンキや壁紙を塗ってしまい、12年前から修復が行われています。
約160年前とはいえ、どうしてこうなった・・・。これで多少は修復したのでしょうか・・・。壁紙やペンキをはがすと、下からモリスの時代の壁紙や壁画が出てくるそうです。
天井の顔
階段上の天井です。係りの人が懐中電灯で照らしてくれました。すると・・・。
あら、人の顔が。ニコッとしてますね。懐中電灯で照らしてもらわないと暗くて見えないかもしれません。こういう遊び心はすてきですね。
ステンドグラス「 Si je puis」
モリスがデザインした植物モチーフのステンドグラス。Si je puis(If I can「わたしにできるならば」)とフランス語で書いてあります。
尊敬していた15世紀フランドルの画家、ヤン・ファン・エイクが作品に書いていた座右の銘「Als ik Kan(As I can「われに能う限り」」に影響を受けているそうです。
この家を建てたのはモリスが26歳のときです。AsをIfに置き換えたところに、まだ若いモリスの謙虚さを感じます。できることでベストを尽くしてみた結果、デザインの道で成功した、ともいえるでしょうか。
宮廷画家ファン・エイクの自負に満ちたAs I can。大量生産品によって失われる生活の中の美を取り戻そうとしたモリスの決意に満ちたIf I can。
ときどき思い出すようにしたいと思います。
ガーデン
個人邸ですからそれほど広くはありませんがお庭もあります。
6月初旬。バラのアーチでバラがきれいに咲いていました。
キッチンガーデンもあります。この日も暑かったのですが、ガーデナーの人が黙々と作業していました。
家の裏側にはお花畑のようなナチュラルな感じに植物が植えられています。
中央の階段を上がって扉をくぐると小さなカフェがあります。このほかナショナルトラストのショップもあり、モリスデザインのお土産を売っています。わたしはストロベリーシーフの傘とエコバッグを買いました。小さいショップですが、モリスのデザインが好きならばすてきなお土産が購入できると思います。
レッドハウスの行き方
ベクスリーヒース(Bexleyheath)駅から徒歩13分です。歩きたくない人は途中までバスで(2駅)。ベクスリーヒースはゾーン 5です。
駅から少し歩くので、スマートフォンなど地図を現地で確認できるものがない場合には、地図をプリントアウトしていったほうがいいです。
午前中はガイドツアーのみ
ガイドツアー(英語)があるのは1時までの5回のみで、1時半まではガイドツアーでないと邸内には入ることができません。時間は約45分。わたしは午後だったのでガイドツアーではなかったのですが、玄関ホールと階段の上にガイドさんがいました。
ガイドツアー(1日5回)
11am, 11.30am, 12pm, 12.30pm, 1pm
詳しく説明を聞きたい人は、ガイドツアーに参加したほうがいいと思います 人数制限があるので電話(03442491895)で予約したほうがいいそうです。
おわりに
若かりし頃のウィリアム・モリスが建てたレッドハウス。その後モリスが手放したために邸内はまだ修復作業中で家具なども少ないのですが、ロンドン中心部から比較的容易に行けますので、ぜひ行ってみてください。
良さげな本。高いが欲しい。
ではまた。