進化論を提唱した自然科学者のチャールズ・ダーウィンが40年間暮らした邸宅「ダウンハウス」。ロンドン中心部から半日あれば電車とバスで行くことができます。
目次
ダーウィンの家「ダウンハウス」
ダーウィンが暮らした家「ダウンハウス(Down House)」は、現在イングリッシュ・ヘリテージの管理のもとで一般公開されています。
ダーウィンは1842年から亡くなるまでの40年間、ここで研究に没頭し、『種の起源』その他の著作を書き上げました。
門を通るとそこは果樹園になっています。
ダーウィンは、この住宅を実家の援助を得て結婚後に購入しました。敷地面積は広いですが、ダーウィンの実家の資金力を考えると、やや質素とも言えるかもしれない住宅です。
邸宅内部
入口でマルチメディアオーディオガイドを貸してくれます(無料)。英語ですが、作家のデイヴィッド・アッテンボロー(映画監督のリチャード・アッテンボローの弟)がナレーションをしています。
かなり高品質なガイドで、興味に応じてスライドも見られるようになっています。ただ全部聞いていると相当時間がかかります。
日当たりのいい応接間です。すべての家具が当時のままというわけではありません。どの家具が当時のものかなど、オーディオガイドを聴くとわかります。
平日の午後遅くだったせいか、わたし以外にまったく見学客がいなくて、ダーウィンがここにいたという静かな興奮とともに、ゆっくり見学できました。
写真撮影は聞いてみたら「フラッシュはダメ」と言われただけでしたが、検索してみると禁止と言われた人もいるみたいで、どうなんでしょう。人がいないので撮りまくっていましたが。
ダーウィンの書斎です。やっぱり机は広いほうがいいよね。2つあると便利だよね。使うものは出しっぱなしが基本だよね。
ダーウィンはキャスター付きの家具が好きだったようです。動かせると便利だからです。
書斎にある家具はほとんどがダーウィンの当時のものです。
ダイニングルームです。お母さんの実家がウェッジウッドなので、基本的に食器はウェッジウッドです。
庶民から見ると豪華に見えるかもしれませんが、ダーウィンはあまり華美や贅沢を好みませんでした。
テラスです。ここに座って日向ぼっこしたのでしょうか。
ダーウィンは、ビーグル号に乗って帰ってきてから原因不明の体調不良に生涯を通じて悩まされました。寒がりですぐ体調を崩すため、この家の日当たりの良さを気に入っていたようです。
ダーウィンの病気が心因性のものだったのか、ビーグル号に乗っていたときに何かに感染したのか、結論は出ていないのですが、いずれにせよ体調悪いとウツっぽくなりますから、日当たりは重要ですね。
しかし体調悪いのにあの膨大な業績を残せるってどういうことなのでしょうか。インターネットもないのにすごいと思いませんか。自分も基本的に体調悪い人なので、信じられないですね(笑)。
わたしは以前「虚弱体質ドットコム」というサイトを作ろうかと思ってたくらい虚弱体質の人に共感するほうなので、そんな状態ですごい業績を残したダーウィンを超尊敬します。4ヶ月間も吐き続けていたときもあったそうです。
まあ5年も船に乗ってるので、ダーウィンは生まれつきの虚弱体質ではないと思いますが、帰ってきてからは、亡くなるまでずっとさまざまな症状に悩まされたそうです。
挙句に水療法など怪しい民間治療にはまるという虚弱体質にありがちな過ちをおかしています。ああ、今日もiHerbでサプリ買っちゃったな・・・。
展示室
その他、ダーウィンについての資料やパネルの展示があります。ビーグル号の内部を再現した展示もありました。狭くて驚きます。
貸切状態だったのでちょっと怖い。うす暗がりに亀とか。
館内はそれほど広くないのですが、ダーウィンのゆかりの品がたくさん展示されているので、詳しくない人でもそれなりに、熱いダーウィンファンは1日いても楽しめるかもしれません。
わたしはバスの時間の都合もあり、1時間半もあれば十分と聞いていたので午後からでかけたのですが、もう少し時間があってもよかったです。
併設のカフェでダーウィンの奥さんのレシピを再現したケーキが食べたかったのですが、食べられませんでした・・・。ケーキ・・・。
「ケーキはまた今度にしたまえ」
廊下の突き当たりに、お腹が痛い感じのダーウィンがいます。生きてるみたいなので、ちょっと怖いです。
750ページもある航海日誌です。ビーグル号で各地を訪れた記録がまとめてあります。ふだんは小さいメモを持ち歩いてそれに走り書きし、船に戻ったときにこちらに清書しました。
デキる人の記録とはこうあるべきという見本を見た気がします。『ダーウィンのノート術』という本を出したら売れるでしょう(たぶん)。
寝室の横の小部屋に服がかけてあって、ダーウィンと奥さんのコスプレができます。暑いので、帽子だけかぶってみました。
体調を崩しやすかったダーウィンは、つねに厚着していました。まあたぶん昔は夏も今みたいに暑くなかったでしょうしね。
温室
庭にはダーウィンが植物観察をした温室があります。ランや食虫植物など変わった植物がありました。
水色の木枠がおしゃれ。
ストレプトカーパス的な何か。きれい。
ランとかベゴニアとか。
虫がお好きそうな方々とか。
プリムラの実験花壇
温室の手前のスペースにはプリムラが植えられています。ダーウィンはこの場所で、ある実験をしました。
当時、プリムラ・ウルガリスの種からプリムラ・ベリス(カウスリップ)が発生するという論文があったそうで、ダーウィンはそんなはずはないと思い、自分で種をまいて確かめることにしました。
小さなランダムな変異が生じ、それが時間をかけて自然選択されていくという自説に反するからです。
翌年、当然ながらウルガリスの種からはウルガリスが、ベリスの種からはベリスの花が咲き、間違いであることが確認できました。
ところが、ダーウィンはそこでさらに奇妙なことに気づきました。プリムラ・ベリスの花をよく観察してみると、長い雌しべと短い雄しべを持つタイプ、短い雌しべと長い雄しべを持つタイプの2種類があることがわかったのです。
自家受精を防ぐ仕組みのひとつ「異型花柱性」の発見です。
奥には広いキッチンガーデンがあります。カフェでは、この庭でとれた野菜を使用したサラダなども食べられます。
ミミズの穴(ワームホール)
ダーウィンはミミズの習性の研究でも有名です。ダーウィンが最後に残した論文もミミズについての論文でした。生涯を通じて一貫して好きだったのはミミズだそうです。
ミミズさんは、いつもがんばってるもんな。当時は、何をしているのかがまだよくわかっていなかったわけですけども。
上の写真の穴は、息子のホレイスがダーウィンのアドバイスを得て作ったものです。ミミズの活動によって土がどれくらい沈むかを観察するためです。
この結果、1年に2ミリ下がることがわかり、ダーウィンも最後の論文の脚注でこの実験について触れています。
このクワの木はダーウィンが暮らしていた当時からあり、子どもたちが登って遊んだそうです。
以上、簡単なダーウィンの家の紹介でした。
ちょっとお子さんとかは飽きちゃうと思いますが、ダーウィンに関心のある方や生物学・地質学などに詳しい方は面白いのではないでしょうか。
入り口にあるギフトショップではガイドブック、絵葉書、キーホルダーなどを売ってます。植物も売っています。ミントグリーンのドアがすてき。
電車とバスでのダウンハウスの行き方
ロンドンからサウスイースタン(Southeastern)鉄道で1時間弱のオーピントン(Orpington)という駅から、本数は少ないですがバスが出ています。乗車時間は20分ほどです。バスの番号はR8です(日曜運休)。
バスの時刻は、グーグルマップで時間指定して確認するのが簡単です。
R8以外にも近くでとまるバスはありますが、歩道のない道を歩くことになるので、できればR8に乗ったほうがいいです。
オーピントンはゾーン6なので、オイスターカードが使えます。バスもロンドン市内と同じ赤いバスなのでオイスターカードが使えます。
入り口の看板です。R8のバスはこの前に停車します。行きは向かい側、帰りは手前側です。外から建物は見えませんから、車で行く場合は、この看板を通り過ぎないように。広い駐車場があります。
料金・営業時間
夏は平日も営業。10時から18時まで。
冬は週末しか営業していません。夏以外は営業時間も短くなるので、公式サイトのこちらのページで営業時間を確認してから行きましょう。
料金は大人12.70ポンドです。5歳から17歳は7.60ポンドです。いずれも記事作成時の料金です。
おわりに
わたしはダーウィンさんにそれほど詳しいというわけでもないのですが、数年前に落ち込んでたときにふと進化論が気になり始め、自分も人類の一部、この自然のとるに足らない一部、でもいまここに自分が存在することは奇跡的、と考えるようになったら、こだわりがとれて、だんだん元気が出てきたということがありました。
ダウンハウスでダーウィンの辛気臭い顔のキーホルダー(笑)を買ってきたので、それを見るとときどきその気持ちを思い出します。
ダウンハウス、行ってよかったなと思います。ではまた。
Home of Charles Darwin(Down House)公式サイト
お出かけの前は、公式サイトで必ず最新情報をチェックしてください。