イギリス南部にあるアランデル城をご紹介します。ローズガーデン、スタンペリーガーデン、キッチンガーデン、温室などのほか、お城の内部や見張り塔も見学でき、ロンドンからの日帰りにぴったりです。
目次
アランデル城(Arundel Castle and Gardens)
アランデルは、アランデル伯爵家、現在はノーフォーク公爵家の居城です。
アランデル伯爵は、イングランド王ヘンリー1世(1068年 – 1135年)の2番目の王妃アデライザ・オブ・ルーヴァンの再婚相手であるウィリアム・ド・オービニーが、1138年頃に爵位を得たことによって始まりました。現在はノーフォーク公爵の従属爵位となり、アランデル伯爵も兼ねています。現在では、英国最古の爵位です。
城壁で囲まれた敷地内にはいくつもの特色のあるガーデンがあります。城の内部を見学し、見張り塔に登れば、近郊一帯を見渡すことができます。
コレクター・アールズ・ガーデン(Collector Earl’s Garden)
広い城内は、ローズガーデンやメドウなどいくつかの見どころが点在していますが、最もユニークで見応えがあるのは「Collecter Earl’s Garden」と呼ばれるエキゾチックなガーデンです。
城の外にある大聖堂を借景に、その手前にスタンペリー(木の切り株)や亜熱帯植物を採り入れた趣向を凝らしたガーデンが広がっています。
あいにくと小雨が降る曇り日だったので、空がどんよりしていて写真がきれいではありません。青空だともっと大聖堂がきれいでしょうね。大聖堂も小さな町にしてはちょっと不思議なくらい立派です。
このガーデンは2008年にリニューアルされ、そのときはチャールズ皇太子もオープニングのセレモニーに出席されました。
「Collector Earl’s Garden」というガーデンの名称は、直訳すれば「コレクター伯爵の庭」。収集家として知られた第5代ノーフォーク公爵トマス・ハワードにちなんでいます。
トマス・ハワードは、熱病を患ったことが原因で心神喪失の状態となり、亡くなるまでイタリアのパドヴァに監禁されていました。
ウィキペディアに詳しく書いてあったので引用します。
しかし彼は18歳の時の1645年に熱病を患ったのが原因で訳のわからないことばかりしゃべる心神喪失者になったといい、死去する1677年まで長弟ヘンリー(後の第6代ノーフォーク公爵)によってイタリア・パドヴァに監禁され続けた。これについて末弟はヘンリーによる公位簒奪と議会に訴えているが、結局不問に終わった。興味を持った回想録作家のリアズビーが真偽を確かめるべくパドヴァまで行ってノーフォーク公と会見したが、彼は帰国後に議会で「公爵は心神喪失者の特徴をすべて備えている」と証言している。1677年12月31日にイタリア・パドヴァで死去。爵位は弟のヘンリーが継承した。Wikipedia「トマス・ハワード」より
うーん、なんか弟にはめられたくさくないですか・・・。
しかも遺言書に「こんなお墓を建ててね」と書いていたのに、建ててもらえなかったそうです。ひどいじゃないか!
というわけで、現在のノーフォーク公爵夫人がトマス・ハワードのメモリアルガーデンとして、この亜熱帯の植物を取り入れたエキゾチックなガーデンをつくることを決めたそうです。公爵夫人まだ57歳。お美しくて感じのいい方です。
トマス・ハワードはノーフォーク公爵の復権を許された人物。そのような重要な人物がかわいそうなことになっているのは問題だということでしょうか。ご先祖様は大事にしないとね。
しかし、こういうプロジェクトすんごい楽しいでしょうね。ちなみにガーデンをデザインしたのはJulian and Isabel Bannermanというご夫婦です。
チャールズ皇太子のお庭であるハイグローブのスタンペリーガーデンも手がけています。歴史ある庭に新しい要素をとりいれるのが得意な感じでしょうか。
ヘッジに窓があって、向こう側がのぞけます。大聖堂を借景に使っているのもそうですが、こういうのも緻密な計算があってこそですね。もしかすると日本の建築・庭園の影響かもしれない。
訪問したのは6月だったのでアリウムがきれいでした。噴水の前はアガパンサスが咲いていましたが、アガパンサスが咲く前はチューリップがきれいなようです。ただチューリップの時期だとほかの植物はあまり咲いていないかもしれないです。
バラは咲き始めで、まだ散らかっていない時期でした。
ここはっきり言って穴場でして、見学者はあんまりいません(笑)。天気がよくない平日だったせいもありますが、貸切に近い状態。
異国風のエリアにはイギリスではあまり見ない植物がたくさん植えられていますが、普通のイギリスでよく見る花もたくさん咲いています。
ポピー、ユーフォルビア、バラ、芍薬などなど、さまざまな植物が植えられているので、もう少し後でもきれいでしょう。
小さな温室もあり、中にはゼラニウムやペラルゴニウム、果樹(イチジクなど)がありました。もう少し温室はカオスなほうが好きですが、すっきりとした温室でした。
キッチンガーデンもあります。本格的に野菜が植えられていました。公爵家の方々はこのお野菜を食べているのでしょうか。
城の中にはホットフードが食べられるカフェもあります。お腹が空いたのラザニアを食べた気がします。普通でした(笑)。
ローズガーデン、メドウ、ホワイトボーダー
城の敷地奥にあるメインのガーデンのほか、エントランスに近い手前のエリアにも、いくつか見どころがあります。そちらもご紹介します。
ローズガーデンです。それほど大きくないですが、とても手入れがよく、きれいに咲いていました。
アランデルに1泊したので午前中に行ったせいもありますが、こんなに咲いているのに誰もひとがいない・・・。
2015年6月12日に訪問しました。バラの見頃の時期は、植えられている種類によっても微妙に前後するので、なかなかどんぴしゃりは難しいですが、わーっと満開に咲くのはもう少し後かな、という感じがしました。ただこの年は6月でも少し肌寒かったです。
ワイルドフラワーのメドウです。敷地が広いのでけっこう歩きますが、そこここにきれいなポイントがあります。
あいにくの曇り空ですが、晴れていると日差しがきついと思われるので、夏に行く場合には帽子があったほうがいいかもしれません。
小さなチャペルの前にはホワイトボーダーがあります。白いジギタリスやルピナスが咲いていました。ここでもシュロっぽい植物がありますが、これってイギリスで見るとかっこいいのはなぜでしょうか。
城内
城内は写真がないのであまり覚えていないのですが、鎧や肖像画とかをたくさん見た気がします。
見張り塔に登る階段がかっこいいです。城の中では時期によってイベントをしていて、わたしが行ったときは、たしか修復作業の専門家がデモンストレーションをしていた記憶があります。
ここで人がいなくなるまで粘ったのですが、おじさんがどいてくれなかった。もしかしたら係員だったのかもしれない(笑)。
イベントはWhat’s Onのページで確認できます。
アランデル城の行き方
アランデルの駅まではロンドンのビクトリア駅からSouthern鉄道で1時間半。駅から徒歩11分です。
Googleマップのピンの位置がおかしいので、Arundel Museumまでの地図を貼っておきます。Arundel Museumの向かい側に入口があります。Arundel Castleで検索すると、城の中まで車で行く道か何かだと思うのですが、エントランスとは違うほうに行ってしまいます。
駅までは荷物がなければ歩けますが、町までのバスも出ています。乗ってもすぐ降りることになりますが、荷物があるならバスかタクシーがいいでしょう。
春から秋のみの営業で、毎日は営業していないので、必ず営業時間等を確認してから計画を立ててください。
チケットは4種類に分かれており、ゴールドプラス、ゴールド、シルバー、ブロンズがあります。
ブロンズは外のみしか見られません。ガーデンだけならこれでOK。
シルバーは、加えて見張り塔。ゴールドは、加えて城のメインのエリア。ゴールドプラスは、加えて寝室。つまり、ぜんぶ見られます。
わたしはよくわからないので全部見られるゴールドプラスにしました。大人は22ポンドです。オンラインで事前に購入すると1ポンドの割引があります。
おわりに
ロンドンに宿泊する場合でも、朝出発すれば日帰りできます。庭だけでなくぜひ城の中も見学してください。大聖堂も近いので、時間があったらそちらもどうぞ。
それからライやルイスほどではありませんが、アンティークショップも何軒かあります。ただアンティークというよりは、わりと新しめのヴィンテージやジャンクの店がメインだったような記憶があります。
お店のほかは閑静な住宅地ですが、レンガの壁にバラの咲き乱れるすてきなお宅や雰囲気のあるパブがあって、写真になる町です。その割に観光客がいなくて落ち着いています。
そういえば、この気に入っているバラの写真も、このお宅で撮ったのでした。ガーデンとお城、そして小さな町の散策が好きな方にはぴったりな町なので、ぜひ行ってみてください。
ではまた。